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【映画】-30 『ザ・サークル』今そこに迫る、利便性と人権の相克

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

 『ザ・サークル』見てきました。

"SNSサスペンスエンタテイメント"って今後もこの作品以外登場しそうにないカテゴリーです…。

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エマ・ワトソンが超適役だと思う

本作は、トム・ハンクスジョン・ボイエガ*1など、俳優陣の中でも主人公役エマ・ワトソンの適役さが印象的でした。

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出典:amazon

24歳のメイは、幸運を手にし、アメリカの片田舎から誰もがうらやむ世界的なSNS企業"サークル"社に入社します。入社後すぐに優秀な結果を残し、CEOであるトム・ハンクスから新サービスのインフルエンサーに抜擢されるメイですが、演じるエマ自身とも重なるようなキャラクターです。

エマの出自は、パリ生まれオックスフォード育ちとセレブな経歴ですが、『ハリーポッター』シリーズのハーマイオニー役で一躍スターに踊り出るなど、サクセスストーリーとして共通するように思います。

また、下記のようにエマは才色兼備と呼ぶにふさわしく、学問においても優秀なようです。

2006年にGCSE(General Certificate of Secondary Educationの略。英国の義務教育の修了証)を受けた。エマは仕事と学校の両立で合格できるか心配していたが、撮影の合間に家庭教師とともに勉強に励み、優秀な成績をおさめて合格した。全国統一試験制度(GCSE)では10科目受験し、8科目が最高のA+評価、2科目がA評価という好成績を修めた。イェール大学、ケンブリッジ大学などにも合格したが、リベラル・アーツ教育のアイヴィー・リーグ名門校のブラウン大学に進んだ。

出典:wikipedia

本作の前提となるメイの"若手キャリアウーマン"像を表現する俳優として最適な人物だと思います。 

 

ソーシャルメディアが人権を侵害し始めたらどうするべきか?

 本作は、分類的には近未来SFにあたるかと思います。

現実の我々の社会でもそうであるように、ソーシャルメディアの急速な普及が個々人のリアルタイムな言動を共有できるようにしただけでなく、より詳細な趣味嗜好などの個人にかかわるデータをもたらし、ビックデータ解析による最適なサービスの提供を可能としています。

しかし、それは一方で、本作の中心テーマである"テクノロジーの進歩とプライバシーとの相克"というリスクをはらんでいます。

プライバシーの権利そのものは、インターネットの普及により重視されてきているものの旧来から認められた権利です。

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より多くのデータを取得し、より良いサービスを提供することを追求していくと、必ず"見せたくない部分を見せない"権利と衝突する場面が出てきます。

 

ソーシャルメディアでは、ネットワーク外部性が働くぶん、サービスを利用せざるを得ない状況を作り出し、普及してしまうとプライバシーを守りたい人たちにも情報の開示を迫るという危うさを孕んでいます。その点では、情報化社会は、このプライバシーの権利をいかに守りつつ、利便性を追求するのかは今後必ず議論されるでしょう。

 

本作においても、メイは新サービスのインフルエンサーとして、自身のプライバシーを捨て様々なデータを提供することで"サークル"社のサービスの利便性を証明し称賛される一方、家族や友人をもプライバシーのない環境に巻き込むという、情報化社会の負の側面が描かれています。

 

リベラルな思想を追求していくと、経済的自由と個人的自由の対立した状況は非常に興味深い議論です。

近代の社会的公正を重視するソーシャルリベラリズム的視点で見れば、個人の不利益を是正を支持するでしょうし、より原理的(ネオリベラリズム)な思想に立てば、社会全体での経済的利益をより向上させる、情報開示の推進を擁護するでしょう。

結局は正解などないのですが、極端な利便性の追求の先に待ち受けているのは、ハクスリーの描くようなディストピアでしかない気がしてなりません

 

まとめ:実際に起きうるし、もしかしたらもう起きているかもしれない

例えば、Twitterなどでは実名登録者の住所を割り出すなどという行動が散見されます。

これはサービスの問題ではなくユーザーの倫理観の問題ですし、それ自体はそもそもなんの利便性向上にも資さない悪質ないたずらでしかありません*2

このように、『ザ・サークル』で想像されたようなサービスが実現されなくとも、現実にプライバシーの侵害は起きうる問題です。その点では、近未来SFと書きましたが、現実問題ととらえてもよい内容です。

IoTなど、テクノロジーの進歩は決して否定するものではありません。

ただし、今後、様々な場面にインターネットやテクノロジーが浸透していくと予測されている中で、私たちは予期せぬ形で自分たちの情報が他人に見られる可能性があることを理解し、サービスの利用を進めていくことが必要になると思います。

 

 

 

 

 

 

*1:スターウォーズシリーズのフィン役で一躍有名になりました。

*2:犯罪者やマナーの悪いユーザーへの見せしめ的にこのような行動がとられることが多いですが、決して"正しい"行動とは言えないと思います。