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【映画】‐22 『ゴースト・イン・ザ・シェル』 攻殻機動隊の新たなシリーズ?

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

攻殻機動隊の実写ハリウッド映画として上映前から注目されていた『ゴースト・イン・ザ・シェル』を見てきました。

ghostshell.jp

アニメ作品では、押井守監督が手がけたアニメ映画として『GHOST IN THE SHELL』があり本作はそのアニメ映画を下敷きとした実写映画と言えます。

1.他の『攻殻』作品群とのキャラ設定の違い

本作は、タイトルの『GHOST IN THE SHELL』を軸としつつ、アニメ『 S.A.C. 2nd GIG』の要素等も取り込んだオリジナルストーリーとなっています。

結果的に、アニメ版ともマンガとも設定が異なる部分があります。

 

まず、最初に少佐について。

主人公(スカーレットヨハンソン)は、「草薙素子」として登場せず、ミラ・キリアン少佐として登場します。

 

※アニメ版と実写版の「少佐」

実写版出典:実写映画版「攻殻機動隊」に登場する公安9課の写真がリーク|ギズモード・ジャパン

 

彼女が全身義体になった経緯は作品によって様々ですが、本作では「乗船中の難民船がテロ攻撃に遭い義体化」となっています。

たとえば、下敷きになっているであろう 『S.A.C. 2nd』では、「幼少期の航空機事故(こちらもテロによる?ミサイル直撃)の結果義体化」です。

設定以外で、特に気になったのは少佐の性格・行動です。

マンガ・アニメともに、少佐は強烈なリーダーシップと行動力で9課を束ねる絶対的存在として描かれます。実際に、『イノセンス』や『S.A.C. SSS』では少佐不在による9課の不協和が見て取れます。

しかし、本作の少佐はそれほどのリーダーシップを発揮しません。どちらかというと、自分を人間兵器として認識し仕事をこなすサイボーグという感じでリーダーというよりも1メンバーです。

 

他には、バトー(ピルウ・アスベック)がレンジャー使用義眼じゃなかったり。

実写映画版「攻殻機動隊」に登場する公安9課の写真がリーク 6 f:id:hiroki0412:20170520224242p:plain

※バトーの比較

実写版出典:実写映画版「攻殻機動隊」に登場する公安9課の写真がリーク|ギズモード・ジャパン

 

また、9課に少佐以外の女性メンバーがいたりもします。

 

2.莫大な製作費によるCGは一見の価値あり

攻殻の世界観は近未来SFとはいえ、電脳化、義体など実現していない技術に溢れています。ルパート・サンダース監督はもともと『攻殻』シリーズのファンのようで、本作は、CGを利用してそれらをうまく表現しています。

おそらく、人間以外のほぼすべてがCGでしょう。こういうのはハリウッドのお家芸ですね。

日本で実写化すると残念な感じ(もちろんハリウッドで実写化してもド〇ゴンボールのように残念な仕上がりになるものもあります)になることは目に見えていますが、これはやはりコンテンツファイナンスの仕組みが違うことが大きいと思います。

 日本の場合は、製作委員会方式により権利利用者を中心としたファンディングになりますが、ハリウッドの場合、純投資として外部投資家がファイナンスする仕組みが確立されているようです。それが、1作品にかけられる製作費の差として現れているのだと思います。

hiroki0412.hatenablog.com

 

3.まとめ-実写版は新たな「攻殻」として受容されるか?

本作については、2つの視点で感想を述べたいと思います。

それは①SF作品(単独作品)としてどうか?②「攻殻」シリーズしてどうか、です。

 

①SF作品としてはどうか

本作、SF作品としては申し分ないと思います。やはりCGをふんだんに使う実写SFは、製作予算の莫大なハリウッド映画の方が迫力があります。

トランスフォーマーとかもいいですよね。

攻殻」自体がアメリカでの評価を受けて、日本で再評価されたという経緯もあるからか細部の作りこみはしっかりなされています。 

 

②「攻殻」シリーズとしてはどうか

賛否両論あると思いますが、自分は攻殻」シリーズとしては不満が残りました

違和感が残ったところを思い起こしてみると↓のような内容かもしれません。

 

・最終的に善悪二元論で片づけてしまう点

攻殻」シリーズはどれをとっても、「高度に情報化した社会」における「現代でも変わらない政治的・経済的問題」がポイントになっています。

そこで重要なのは、「必ずしも悪が存在しない」という点だと思っています。

マンガ・アニメでは、何らかの事件を9課が究明した結果、首謀者が見つかっても必ずしも彼らの行動原因は悪意に満ちていなかったり、何らかの別の事象による被害者であったりします。つまり、それぞれの「正義」のもとに行動している者ばかりです。

9課は、それでも公安職員といて公務を執行しますが、視聴者としては「はたして何が正しいのか?」ということはなかなか判断しにくい問題ばかりです。

 

・「人間とは?魂とは?」という問いの弱さ

少佐の過去に秘密があることがわかり、全身義体となった経緯を探っていくことが本作の中心ストーリーとなりますが、あくまで「自分は何者か?」という問いに過ぎないという印象です。

その他「攻殻」シリーズで特徴的なのは、あくまでゴーストがある「人間」としての少佐とそうではない存在(意思を持ったAIなど)との対話を通して、総体として「人間を人間たらしめるものは何か?」を問います。

 

下記レビューがすべてを表現してくださっているので、共有したいと思います。

oriver.style

どうも本作は「電脳化」や「義体化」といったガジェットを使うことに終始し、本質的な部分が置き去りにされているように思います。

まさに、ゴーストのないロボットといったところでしょうか?

 

 この方は、実写化に伴い失われた要素を「曖昧な情感」と表現されていますが、私としては「曖昧な境界」と表現したいと思います。

つまり、「悪とは?善とは?」といった問題提起や、全身義体の少佐/AIが自我を持ち始めたタチコマ/記憶へのゴーストハックなどから「人間とロボットの境界は?」といった問題提起も含め、少佐と各事件の当事者のコミュニケーションを通して、二元的な概念に存在する非常に曖昧な境界を描き出すことが士郎攻殻/押尾攻殻/神山攻殻のすべてに通じるものだったと思います。

 

本作を「攻殻」として見るのか否か、これは作品の面白さとは別問題なのでぜひそれぞれの作品を見比べてみてほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

攻殻機動隊 PERFECT BOOK 1995→2017

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