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今日は何読もう。何観よう。

旅と読書と美味しいものと。

【映画】-12 『何者』 何者かになろうともがく若者たちの世界

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

季節がだいぶ秋めいてきました。秋物の服を買わなければ…。ただ、夜は寒いくらいですが日中はまだまだ暑い日もあり体調崩しそうです。

今日(10/15)封切の『何者』を観てきました。

nanimono-movie.com

就活中の大学生達を描いた作品そのものがかなり珍しいと思います。それ以上に現代の大学生の実体をここまで細かく描いている作品が他にないです。

小説を読んだのは、当時自分がちょうど就活をしている時でした。その当時はそれほど思うところはなかったのですが、現在仕事や私生活で悩みながら観ると全く違う見方になりました。

この感想は、本作で描かれる若者世代として、そして実際の就職活動を経た人間としての感想です。

 

"内定"は社会からの肯定

本作のテーマは就職活動。青春映画として大学生活を描いた作品はいくつかあると思いますが、就職活動をテーマにした作品はなかったのではないでしょうか。

就職活動は1つのふるいです。ごくありきたりな人生を進むと、1度目に高校受験、2度目に大学受験、3度目に就職活動というふるいにかけられます(大学を飛ばして高校から就職活動という方や中学からという方もいらっしゃると思いますが、現時点で大半を占める流れという意味です)。

そして、1,2度目は”就職活動”に向けた助走的な意味を持つのが現在の社会だと考えています。よい高校に入り、よい大学を目指すのはつまるところよい就職先(企業とは限りませんが)への切符をつかむための流れです。

就職活動をし、自分を社会にアピールする。その結果、企業から”内定”をもらえる。

”内定”は、初めて社会に存在を肯定されたと思える瞬間なのです。

 

SNSの位置づけ

本作では、"SNS"、特にTwitterが重要なツールとして登場します。わたしたちはLINE、FacebookInstagramなど様々なSNSを日常的に利用するようになっています。しかし、それぞれに断片的に残されたものをかき集めても決して私たち自身にはなりません

Twitterは140文字でそのとき思ったことをつぶやくツールです。しかし、そのTwitterでも、他人を気にして本当に思ったことをつぶやけない、本音を吐き出すために自分でない者を作り出している人が多くいるのではないでしょうか(実際私もその一人です)?

そういったSNSの本当の姿を切り取っているという点でも本作は素晴らしいです。

 

ラストは映画特有の表現に

ラストに近づくと小説では文章ならではのレトリックが使われて読者が裏切られます。その部分については、映画では別の素晴らしい表現で描写されています。

あまり、多くを説明すると内容的にもネタバレになってしまいますが、Twitterを用いた描写の一部に舞台での講演を模した表現が追加されています

そのほかにも、拓人たちが住む部屋と理香の部屋(上下階)を同時に写し、それぞれでの人物の言動を描くなど、文章では表現できない形をとっている部分が数多くあります。

小説の映画化の中でも映画特有の表現技法が成功している作品だと思います。

 

まとめ-自分をどのように表現するか?他者からどのように評価されるか?

就職活動にしろ、SNSにしろ、拓人やギンジ達の熱中した劇団にしろ、本作の最も中心的なテーマは「自分をどのように表現するのか?他者からどのように評価されるのか?」です。

拓人が、就職活動でのアピールをダウトにたとえる場面があります。「リーダーシップがある」「英語が得意」など、あらゆる言葉で自分を飾り、企業にアピールすることになるのが就職活動です。

それらのアピールは、すべて本当であるとは限らず「どのように見てもらいたいのか?どのように評価されたいのか?」ということを考えながら、もっているカードを強く見せるのが就職活動であるということです。

また、拓人がギンジと対立するきっかけとなったのは、有名な人たちとの出会いを周囲にSNSで拡散し自分が頑張っていることをアピールするギンジの行動が「サムい」と感じたからでした。

ほとんどの人間は誰かに評価されなければ、また、だれかと比較しなければ自分の価値や自分の立ち位置がわかりません。

企業から内定をもらったことやだれかより先に内定を貰えたことが安心感や優越感につながる、そうして自分を保てるのです。逆に、隆良のように就職活動をしないことで「自分は他者とは違うのだ」と自分を肯定しようとする人たちもいます。

大学生という、まさに"何者"でもない人たちを描くことで、様々な角度から自分を肯定してもらうためにもがく姿を描くリアルな作品でした。

 

 

何者 (新潮文庫)

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