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今日は何読もう。何観よう。

旅と読書と美味しいものと。

ヒトより民主的なミツバチ

 今回は、この前読んだ『ミツバチの会議』という本を読んで考えたことのまとめ。                 

 

 ミツバチと言えば、はちみつを作って私たちの生活に貢献しているが、実は高校生物の教科書に載るくらい面白い生態を持っている(※1)。そんなミツバチが実は民主主義的な意思決定を行っていて、ヒトよりもうまくいっているというのだ。

 

1.民主主義とは?  

 ミツバチの意思決定に入る前に『民主主義』について、簡単に振り返ってみる。民主主義の始まりは、古代ギリシャと古い。都市国家ポリスであるアテナイで行われたのが起源であると考えられている。古代民主制の特徴は、1:市民に平等に参政権があること(※2)、2:統治者と被統治者が同一、3:自己の所属する共同体への愛着心、の3つだった。現代の民主主義が間接民主制(※3)であるのに対して、この古代ギリシャの体制を直接民主制と言った。ちなみにミツバチもこの直接民主制である。

2. 独裁しない女王蜂

 ミツバチの巣(コロニー)には、必ず1匹の女王バチがいる。「女王」というと、絶対的な権力を持ち共同体を支配しているように思える。しかし、実はそうではない。もちろん、女王バチがあくせく働くことはない。餌の調達は働きバチの仕事で、女王バチは繁殖が主な役割だ。ただ、どんなことでも、働きバチに命令できるわけではない。むしろ、コロニーの存続という目的のため、働きバチによって「生かされている」と言ってもいいほどである。具体的には、以下で見る〈分蜂時の新たな巣の決定〉〈引越し時期の決定〉のタイミングでミツバチの民主主義は顕在化する。

3.新しい巣はどこにする?

 ミツバチのコロニーで、女王バチに権力が集中していないことを示すイベントとして、分蜂時の新たな巣作り場所の決定プロセスがある。

 ミツバチは、初夏にコロニーを複数(大抵は2つ)に分ける作業、分蜂を行う。この際、新たな巣を作る場所を探すことが必要になるが、これは老年の採餌バチから選ばれた探索バチが担当し、候補地を探し出す。この時、いくつかの候補地が挙がってくるのだが、この候補地の絞り込みにおいては、女王バチが決定を下すのではない。探索バチが思い思いに候補地をアピールするのを見て、巣のハチたちがそれぞれ独自に判断し、調査する巣を決める。ハチたちは、最適な巣の条件の共通認識を持っていて、候補地がそれに近いほど、激しくダンスして、巣の仲間にアピールする。仲間はそれを見て、探索する候補地を決め、評価する。この時、ダンスは候補地が最適条件に近いほど長く行われる。その結果、ダンスを目にするハチが多くなり、最終的には、合意が形成され、最適な候補地が選ばれる。まさに直接民主制をとっているのだ。

 この時、ミツバチはヒトがよくそうするように、多数決を行っている。つまり、候補地を選択する上で、ある候補地が、一定の定足数の賛成を得た場合、その時点で、合意とみなすのだ。意見の完全一致を目指すよりもスピードが速いということはミツバチもよくわかっているらしい。

4.ミツバチから何を学ぶべきか

 本書の最終章において、ミツバチの意思決定から得られる教訓が5つ挙げられている。

教訓1 意思決定集団は、利害が一致し、互いに敬意を抱く個人で構成する

教訓2 リーダーが集団の考えに及ぼす影響をできるだけ小さくする

教訓3 多様な回答を探る

教訓4 集団の知識を議論を通じてまとめる

教訓5 定足数反応を使って一貫性、正確性、スピードを確保する  

 この中でも、「教訓2 リーダー」について考えてみる。というのも、こういう記事が…。→サイボウズ式:「民主的なチーム」が崩壊した話  記事では、民主的なチームがビジネスにおいてうまくいくとは限らず、リーダーの役割の重要性が説かれている。そういった意味では、この教訓2とは対照的な主張ということになる。民主的チームがダメな理由として、1:コミュニケーションコストが上がること、2:意見のエッジが丸くなることが挙げられている。では、ミツバチの知見を活かしてこの問題を解決できないか?  話し合いの時間が長くなりすぎるという点は、やはり、巣作りという1つの問題についてしか議論しないミツバチには生じにくい悩みだ。この点については、あらかじめ、話し合いで決定する範囲を決めておくことで、際限のない意思決定会議の広がりを抑えることができるだろう。

 次に、意見のエッジが丸くなるということに関して。これは、自分がAだと思っていても、もう一人はそれはよくないと思っていて、結局無難な意見に落ち着いてしまうということを意味する。この点に関しては、あらかじめ、最適な条件を決定するのがよいのではないか?ミツバチも最適な巣の条件に関して、共通の認識を持ったうえで議論を行う。同様に、先に最適な条件が何かの認識を共有することで、意見の陳腐化を防げるかもしれない(条件決定の段階で無難になる可能性もあるが…)。  このように、ミツバチは、とても賢く、民主的に共同体の運営を行っている。日本の政治も、うちわがどうとか言ってないで、共同体のより良い存続のため、意思決定を行ってほしいものだ。 ※1:高校の教科書では、採餌バチが巣の仲間バチに餌場の場所を教える8の字ダンスが載ってます。 ※2:ただし、成人男子のみで、女性・奴隷に参政権はありませんでした。 ※3:市民が代表者を選出し、政治を委任する体制です。

ミツバチの会議: なぜ常に最良の意思決定ができるのか ミツバチの会議: なぜ常に最良の意思決定ができるのか
(2013/10/14)
トーマス・D. シーリー

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