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日本農業その1 改革の概要

 少し、昔になってしまったが、全農が株式会社化するというニュースが流れた。

 

www.nikkei.com

 これは、アベノミクスの成長戦略における農政改革の一貫ということになるのだけれど、JAが協同組合だろうが、株式会社だろうが一般庶民である僕たちには何の関係もない気がする。ということで、現状進んでいる農政改革について、是非はともかく、どのような意味があるのか、に焦点を絞ってまとめ。

TPPと農業

 そもそも、農政改革が必要とされた理由は、TPP(※1)によるところが大きいだろう。 

 これまで、多くの作物について、日本は輸入品に高関税を設定し、国内農家を保護してきた。TPPに参加すると、この関税の撤廃が原則となるので、保護されていた国内の作物は、海外の安価な輸入品に駆逐されてしまう…。

 こんな懸念から、TPPには反対意見もあったようだ。「なら参加しなければいいじゃん」という話になるが、そううまくはいかない。日本は交渉に参加したのもかなり遅かったが、しぶしぶにも行動した理由はアメリカが交渉に参加してしまったからだろう。原加盟国である、シンガポールブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国だけであれば、不参加でもよかったのだろうけれど、世界一の経済大国たるアメリカが参加してしまえば、そこに参加しないと今後経済的に不利になることは請け合いだ。

 小学校と同じである。『人気者のべいとくんが、突然パッとしないグループと今日から遊ぶことを宣言した。やまとくんは、あんまりそのグループと遊びたくはなかったが、しぶしぶついていくことにした。これまでもコバンザメのようにお供を続けていたし、もしここで反抗すれば、今後孤立してしまうかもしれない…。べいとくんは腕っぷしも強いのであまり敵対したくない。』こんな感じだろうか。

 こうして、外的な圧力等々あってTPP加盟交渉に参加したわけである。今回は、TPPそのものについてまとめたいわけではないので(詳しくもないので)、安倍首相による改革の概要に移ります。

アベノミクスにおける農地改革

 上述の通り、TPPに参加することになりそうだとなれば、懸念材料として挙がった農業の「競争力」強化が必要ということになる。そのための戦略が6次産業化ということになる。  

農業、水産業は、産業分類では第一次産業に分類され、農畜産物、水産物の生産を行うものとされている。だが、六次産業は、農畜産物、水産物の生産だけでなく、食品加工(第二次産業)、流通、販売(第三次産業)にも農業者が主体的かつ総合的に関わることによって、加工賃や流通マージンなどの今まで第二次・第三次産業の事業者が得ていた付加価値を、農業者自身が得ることによって農業を活性化させようというものである。  六次産業という名称は、農業本来の第一次産業だけでなく、他の第二次・第三次産業を取り込むことから、第一次産業の1と第二次産業の2、第三次産業の3を足し算すると「6」になることをもじった造語であったが、現在は、第一次産業である農業が衰退しては成り立たないこと、各産業の単なる寄せ集め(足し算)ではなく、有機的・総合的結合を図るとして掛け算であると今村が再提唱している。 wikipediaより抜粋

 これまでは農家が生産を担い、加工は別の業者が行い、流通・販売はJAあるいは小売店を通してといったバラバラに行われていた商品化までのプロセスを集約することで、効率化することを目的としたのが六次産業である。

  そして、6次産業化する上で、障害となっていたのが農地と流通の問題である。一方は冒頭で挙げた全農の株式会社化(流通)が改革の動きだが、農地については、農地中間管理機構というものが設立されている。

農地法規制と全農

 6次産業を目指すということは、農業をより集約的な産業として再編するということである。その際、問題となるのが、農地法による権利移転制限と全農の流通掌握だった。

 農地法では、農地の所有権を移転又は使用収益する権利を設定する場合(3条)、農地を別の用途の土地に変更する場合(4条)、農地を別の用途で用いるために権利を取得する場合(5条)は、許可が必要となる。普通の土地を買ったり借りたりするより厳しく制限されているのである(※2)。

 また、農家の人たちからすれば、農地は財産なので、なかなか売ってくれない。借りて大規模に農業をしようとしても、それぞれの農家と交渉せねばならず、しばしば飛び地のような状態となってしまっていた。これでは、借り手も効率的な農業が行えないので意味がない。その結果、耕作するでもなくただ財産として保持された耕作放棄地が増加しているのだろう。

 これを改善するために、農地中間管理機構が設立された。機構は、借地となる農地をいったん集約することで、借り手に対し効率的に土地を配分することを目指している。賃貸借がメインとなっているのは、上述の通り、土地は農家の人たちの財産として残すためだろう。また、もともとその意図から慣習として、賃貸借がメインで取引されていたことも関係しているらしい。この機構の目的は、第一義的には、「耕作放棄地の解消」ということになるだろう。しかし、成長戦略の文脈でより重要なのは、「効率的な土地配分」である。一度機構が土地を借り受けることで、飛び地とならないように効率のよい土地配分が可能となるということのようだ。

 もう一点が、冒頭のJAの株式会社化についてである。土地を集約して効率よく生産することができるようになったら、次は流通まで一括してできるようにしようというのが6次産業だ。そこでなぜJAを株式会社化するのか?それには、いくつか思惑があるだろうが、1つには独禁法の問題があるだろう。    これまで、農協は独禁法22条の協同組合にあたり、適用除外とされてきた(※3)。今回、株式会社となったことで、協同組合としての除外を受けられなくなり、今後、独禁法により勧告を受ける可能性が高い。そうなれば、生産物の流通段階についても、これまでの実質的独占状態から、より競争的な環境へと移ることになるだろう。

まとめ

最後に、まとめてみると…  今の農政改革は、これまで個人農家に対して保護主義的だった政策を転換し、より効率性を重視した競争市場を目指しているということになるだろうか。その理由は、TPPという外的な圧力によるということになりそうだ。個人農家の方々にとっては厳しいかもしれないけれど、保護主義的な政策をとり続けていては、グローバル化が進んだ現在の状況では難しいように思う。これを機会に、農業においてもイノベーションが起こることを期待。 ※1:環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement または単に Trans-Pacific Partnership)の略 加盟国間での関税なくして、もっと製品やサービスを流動的にしようぜな協定 ※2:農地法によると、 3条 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用賃借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。…  4条 農地を農地以外のものにする者は、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可(その者が同一の事業の目的に供するため4ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合(農村地域工業等導入促進法(昭和46年法律第112号)その他の地域の開発又は整備に関する法律で政令で定めるもの(以下「地域整備法」という。)の定めるところに従つて農地を農地以外のものにする場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第5項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。…  5条 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第4項において同じ。)にするため、これらの土地について第3条第1項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が都道府県知事の許可(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため4ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合(地域整備法の定めるところに従つてこれらの権利を取得する場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第4項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。… とされている。 ※3:独占禁止法第22条 この法律の規定は、次の各号に掲げる要件を備え、かつ、法律の規定に基づいて設立された組合(組合の連合会を含む。)の行為には、これを適用しない。ただし、不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実質的に制限することにより不当に対価を引き上げることとなる場合は、この限りでない。 一 小規模の事業者又は消費者の相互扶助を目的とすること。 二 任意に設立され、かつ、組合員が任意に加入し、又は脱退することができること。 三 各組合員が平等の議決権を有すること。 四 組合員に対して利益分配を行う場合には、その限度が法令又は定款に定められていること。

参考 農地中間管理機構の概要

http://www.maff.go.jp/j/keiei/koukai/kikou/pdf/kikou_gaiyou2.pdf

wedge.ismedia.jp

www.agrinews.co.jp

  

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