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読書案内:『モテキ』と『東京タラレバ娘』で比較する30代男女の恋愛観

久しぶりにマンガ喫茶に行って 『東京タラレバ娘』を読んできました。面白いですね。

男の恋愛応援マンガ『モテキ』が好きな自分としては、同年代の男女の恋愛観の違いが興味深かったので2作品を比べてみたいと思います。

 

 

モテキ コミック 1-5巻セット (イブニングKC)

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東京タラレバ娘 コミック 1-7巻セット (KC KISS)

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モテキ』はまず夢を見せ、『タラレバ娘』はまず現実を突きつける

2作品の全体的な世界観は対照的です。

これは男女の現代恋愛観が大きく異なっていることを反映しているからだと考えられます。

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出典:久保ミツロウモテキ』より

 『モテキ』は童貞に訪れたモテ期がテーマ。

これまでモテなかった主人公藤本幸世があらゆる女性の知り合いからモテ始める(?)話。大前提として、これまで決してうまくいってなかった恋愛が突然うまくいくので、基本的に希望に満ち溢れてます。ただ、悲しいかな、最後の最後にうまくいきません

これが童貞か…。

 

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出典:東村アキコ東京タラレバ娘』より

対して、『東京タラレバ娘』。

決して、これまでの恋愛がうまくいかなかったわけではない。ですが、色々悩んで選べずにいる間に30代。周りが幸せになっていく中、すでに女子力を飾る気もない3人は居酒屋で残った者同士「〇〇たら」「〇〇れば」と夢を語ります。

それを見たイケメンの謎の常連に「タラレバ女」と命名されます。

選び続けたタラレバ女には、ことあるごとに自分たちの置かれた現実が突きつきつけられます。ときおり幸せになるかと思わせて、一気に突き落す

女性の方が現実に対してシビアです。

 

男は選べず30代。女は選び過ぎて30代。

 2作品を比べておいてなんですが、男女の違いはさておき、そもそも彼らは恋愛市場でのプレイヤー層が違います。

モテキ』幸世は、30代これまでもモテなかった層。恋愛負け組です。

東京タラレバ娘』の3人は、20代の頃は、決してモテなかったわけではありません(この意味では幸世の比較対象は、いつかちゃん30歳バージョンの方が適切かもしれません)。

①異性との交際経験(20・30 代未婚の男女)

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 ②結婚に対する意向(20~40 代未婚の男女)

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出典:明治安田生活福祉研究所「2016年 20~40代の恋愛と結婚」

 明治安田生活福祉研究所の2016年の調査では、20代男性の約半数、30代でも4割近くが「交際経験なし」(グラフ①青色)。対して、女性は、20代では、34%いる恋愛未経験者も30代までには25.7%まで縮小します。

また、結婚に関しては、「できるだけ早く結婚したい」(グラフ②青色)と「いつか結婚したい」(グラフ②水色)を合わせた層は、男性は20代~30代までほぼ変わらず40%前後。対して、女性は、20代で59.0%、30代で45.7%となっています。

 

30代男女では交際経験値と結婚に対する意識に大きな開きがあり、この中心的な層の違いがそれぞれに受けるマンガの違いに表れているように思います。

つまり、

・男性側は、全然モテず、交際経験0で20代を終えようとしていることに悶々としている層。結婚を考える以前にとりあえず童貞を卒業したい。

・女性側は、恋愛は20代では困らない程度に経験してきたものの、それゆえによりよい男性を求めていつの間にか結婚から遠ざかっている層。結婚願望が強いだけに彼氏に求めるものも妥協ができずにいる。

 といった感じです。

これはやはり、女性の場合は体力的な面で出産適齢期があり、逆算して結婚しておきたいと考える年齢があるというのが大きいと思います。男性も「将来は結婚したい」「子どもと幸せな家庭を築きたい」と漠然と考えたり、周囲がどんどん結婚していくと焦りは出てくるでしょうが、女性ほどのプレッシャーはないのではないでしょうか。

 

まとめ:女性マンガ家からみた恋愛

最近では男女平等が意識されてきています。

しかし、2作品がそれぞれ人気を得たという点から、「男女の恋愛観」の中心にはまだまだ大きな開きがあるようです。

いや、むしろこの恋愛観は決して交わらないのかもしれません。

あえて、語弊を恐れずに言うと、この差は生物としての男女の差を反映しているように思います。

(あんまり言うとジェンダー界隈の人から批判を受けそうですが…)

ただ、2作品について面白いのは、どちらも女性マンガ家の作品なんですよね。

これは、単純にそれぞれ自分たちの立場で見ているものを描いたわけではないという意味で興味深いです(男性から見た女性の恋愛観も気になるところ)。

察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方

察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方

 

 

 

『この世界の片隅に』ヒットはコンテンツファイナンスの新たなMakuakeとなるか?

 『この世界の片隅に』が、クラウドファンディングでの調達を行い大ヒットを飛ばしたことで映画をはじめとしたコンテンツファイナンスにおける同手法のプレゼンス向上のきっかけになったかもしれません。

私はコンテンツ業界に身を置いているわけではありませんので、正確性に乏しいかもしれませんが、コンテンツファイナンスを振り返る上でのポイントは以下の通りだと認識しています。

1つ目に、これまでの主流である『製作委員会方式』。

次に、信託法の改正とともに実現可能となり注目されたものの、一過性のブームとして過ぎ去った『著作権信託』。

最後に、IT技術の発達により可能となった『クラウドファンディング』。

これら3つの特徴を考えつつ、コンテンツファイナンスの未来を考えます。

1.これまでの主流:製作委員会方式

これまでのコンテンツ産業界で、各作品に対する資金調達手段の最も主流となっているのが『製作委員会方式』です。これは、著作権及び著作隣接権(放映権や出版権など)を利用する予定の企業がそれぞれ資金を出資して任意組合(民法667条以下)を設立し、それを「製作委員会」として作品の製作・管理・二次利用の器とする方式です。

出典:公正取引委員会アニメーション産業に関する実態調査報告書

製作委員会方式のメリット

・各権利者でリスクを応分負担

・スキームがわかりやすい 

・関係者が各業界の企業(プロ)に限定

製作委員会方式のデメリット

無限責任

・組合員の資金負担余力に基づいた資金調達 

 

まず、第一にこのスキームが好まれるのはリスクを分散できるからだと言えます。1社で製作するよりもその後の権利利用者が集まって作品を作るほうが失敗したときのリスクは軽減されます。

その上で「製作委員会」は法的には任意組合となりますが、結局は出資者の集合による資産(著作権及び支分権)の管理を行う集団スキームであり非常にシンプルです。

また、本スキームはそもそも映画製作者や出版社など業界関係者(プロ)の資金提供を念頭に置いているため、対外的な説明etcの煩雑な手続きが不要です(後に見る2つの方法では、外部への説明必要になります)。


 

デメリットは、組合員(各出資者)の無限責任及び資金負担余力です。

任意組合では、各出資者は、原則として組合に係る債務について出資割合に応じて無限に(組合財産を超えて個別の資産に対しても)責任を負います(民法674条)。また、各関係者が資金提供を行うため、おのずと各作品に対する資金負担能力は限られます(コンテンツ業界は非上場の会社も多く、リスク資金の調達手段は限定的だという認識です)。


この2点の結果として、収益を見込みやすい原作モノの映画化やシリーズ作品などが好まれると考えられます。

これがしばしば「製作委員会方式が日本のコンテンツをダメにしている」と批判される理由でしょう。

 

しかし、それにたいしては下記のような反論もあります。



個人的には、日本のコンテンツ作品劣化の原因を製作委員会方式に求めるのは無理があると思います。

より投資商品としての性格が強く大規模な資金提供がなされるアメリカ(ハリウッド)では、「とにかくド派手な演出」や「アメコミヒーロー」などとにかく国民が好みそうなテーマに集中しており、外部資金の調達構造を進めた結果作品の陳腐化へと進んだのではないかと考えています

 

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