最後にこれだけは言わせて欲しい

ダラダラ出来なくなった金融マンの遺言

クラウドファンディングとはなにか

※本記事は著者個人の見解を含みます。本記事の内容は、投資を推奨するものではありません。あくまでも各個人の責任において投資をお願いいたします。

みなさんは"クラウドファンディング"をご存知でしょうか?

イベントや商品の資金をネット上で直接個人から調達する仕組みがクラウドファンディングです。

しかし、クラウドファンディングと一口にいっても、実は様々な種類があるんです。

今回はクラウドファンディングの種類について考えたいと思います。

 

クラウドファンディングの分類

クラウドファンディングは、資金提供に対するリターンの種類により、いくつかに分類できます。まず、金銭的なリターンを求めるのかどうかで①非投資型投資型に分類できます。さらに、そのリターンの種類で5分類に区分することができます。

非投資型

 1:寄付型

主に、ボランティア活動などを支援する目的で資金提供する形式です。最もイメージされるのはこの形ではないでしょうか?

資金提供のリターンは原則なし。お礼メールや案件の進捗報告が一般的です。

 

 2:購入型

報酬型とも。

特定の商品を開発する資金をクラウドファンディングで調達する形式です。

ソニーが(共同開発ですが)購入型クラウドファンディングを利用したことで大企業へ利用が広がりました。

weekly.ascii.jp

資金調達側を考えると、ベンチャー企業にとってあらたなファイナンス手法として機能しつつあるだけでなく、大企業はマーケティングツールとしても利用しつつあります。

資金提供のリターンは商品そのものであることが一般的です。ただし、金額に応じて寄付型と混合します(たとえば、10,000円の商品開発に関するファンディングの場合、1,000円の資金提供だとお礼メールのみなど)。

 

投資型

 3:貸付型

ソーシャルレンディング、海外でいうP2P lending*1ともいいます。海外では、個人間の貸付も仲介していますが、日本では法人向けが基本です。

日本では、貸付を「業*2」として行うものは貸金業第3条の登録が必要になります。これには様々な条件のクリアが必要になるため、海外のような直接の貸付は形式はとられず、匿名組合形式がとられます

最大手のマネオさんのHPに掲載された仕組み図で見てみます(他の運営者も基本的には同じスキームを使っています。)。

maneoのしくみ

出典:マネオHP

https://www.maneo.jp/

 個人の投資家(図右側)がファンド運営者(図中央。ここではmaneo)と匿名組合契約を締結し、匿名組合出資を行います。ファンド運営者は、資金需要者(図左側)に貸付を行います。ちなみに投資家は資金需要者の個別の名前を知ることはできません(これも貸金業法の適用を回避するための措置とのこと)。

※2022年現在では、借入人の情報開示に関する方針が変更され、情報開示が進み始めています。これは上記マネオを含む一連の不祥事を要因とするものと考えられます。

 

リターンは匿名組合出資の配当であり、貸付利息から手数料を差し引いた残額を受け取ります。

こちらは金融商品なので、運営者は金商法等の規制に服します。上述の通り、貸付にあたっては貸金業者としての登録が必要なほか、匿名組合出資(金商法2条第2項の「みなし有価証券」)の募集及び仲介には、第二種金融商品取引業の登録が必要になります。

 

 4:ファンド型

こちらは、資金需要者=ファンド運営者として直接資金を募集する形式です。

貸付型の違いは、「形式上のファンド運営者が誰か?」。ファンド運営者(匿名組合出資の受入側)を商法上「営業者」と言います[商法第536条]。

貸付型の場合、クラウドファンディングの事業者がファンド運営者として一次的に資金を集め貸付を行います(正確には、出資を募集・貸付を行う主体と出資の仲介を行う主体は法人格としては別個の会社を使っているようです)*3

f:id:hiroki0412:20161105232651p:plain

出典:日証協 「新規・成長企業へのリスクマネー供給に関する検討懇談会」資料より

ファンド型の場合、資金需要者が直接ファンド運営者として資金を調達します(実際のファンド運営はクラウドファンディング事業者が業務委託を受けるようですが)。クラウドファンディング事業者は資金需要者と投資家との間で匿名組合出資を仲介します。

 

これによりどのような違いが生じるかというと、リターンの変動率が変わってきます。

貸付型は、いったん貸出の形式をとっているので、固定金利-手数料分のリターンが目標利回りとして記載されています(貸付型でも結局投資家が保有するのは匿名組合出資持分なので確定利回りではないのですが)。

しかし、ファンド型の場合、資金需要者=ファンド運営者の業況の良し悪しによって配当が大きく変動するため、1つの数値で目標利回りは記載されていません。売上高の変動と損益分岐点、および事業計画が載っていたりはします。場合によって当初出資分を割ることも覚悟しなければなりません。ファンド型の場合、より株式に近い性質を持っていると言えます。

 

 5:株式型

資金の提供に対し、株式を交付する形式です。

これまで未公開株の取引に関しては「グリーンシート銘柄*4」として取引の基準が定められていました。しかし、要件が厳しく(上場株と同程度の情報開示が必要になるなど)あまり利用されていませんでした。

そこで、クラウドファンディングの流れに乗って再検討されているのが株式型です。

株式型に関してはまだまだ設計段階の色彩が強いですが、ポイントは「投資グループ」というシステムです。

これは、各株式ごとに「投資グループ」という取引単位を作り、参加社内でしか売買を行えない形にするというもの。これにより流動性はかなり落ちますが、特定のグループへの情報開示で済むように負担軽減を図ったようです。

現在、株式型を運営している事業者はいませんので細かいスキームはわかりませんが、先日(2016 11/3)に第1号事業者が登録されたようです。

www.nikkei.com

日本クラウドキャピタル

http://www.cloud-capital.co.jp/investment-banking/

リターンは言わずもがなですが、株式の配当又は値上がり益(キャピタルゲイン)です。上場株式と同じように実績配当であり、元本の償還が約束されているわけでもないためリターンの変動率は高いです。また、株式型はベンチャー企業等が利用することを期待されているため、さらにリスクは高い商品になるでしょう。投資家にも相応の目利き力が必要になります。

 

 

長くなったので、次回それぞれの代表的な運営者と現在の市場をご紹介します。

 

 

クラウドファンディングではじめる1万円投資

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KINZAIバリュー叢書 ザ・クラウドファンディング

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よくわかる 投資型クラウドファンディング

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FinTech 2.0ー金融とITの関係がビジネスを変える

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FinTechの法律 (日経FinTech選書)

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*1:Peer to Peer lending:貸主・借主の直接仲介システム

*2:貸付を反復継続して行う意思がある場合、「業」とみなされる可能性が出てきます。[最判昭和29年11月24日刑集8巻11号1860頁、最判昭和30年7月22日刑集9巻9号1962頁]

*3:maneoの場合、貸金業者及び匿名組合の営業者が"maneo株式会社"、第二種金融商品取引業者が"maneoマーケット株式会社"です。

*4:グリーンシートに関しては平成30年に廃止されるようです。

就活では「何者」にもなれない

『何者』が映画化するみたいですね。10/15上映。
今の職場での将来に不安を覚えつつ、「何者」でもないので大した転職先がない自分にはタイムリーです。
『何者』の主要キャラたちの背景やその後を描く『何様』が出たのを機に、小説を再読すると色々考えました。新卒時代に読んだ時はそんなに響かなかったんですがね。

「何者」にでもなれるSNS

『何者』で描かれるのは、今時の大学生です。Twitterでつぶやき、FacebookでいいねしLINEで連絡を取り合うそんな人たちです。
彼らにとってSNSはコミュケーションの手段でありつつ、「別の自分」を形成するツールでもあります(自分もそうです。このはてブに連動しているTwitterはリアルの友人がほとんど含まれないサブアカウントです。)。
SNSは現代の若者(自分含め)にとって「ペルソナ*1」的な意味があります。twitterの本垢では思ったことをつぶやき、裏垢でリアルの友人には言えない毒を吐く。楽しいイベントはFacebook に流していいねをもらう。そうやって誰に対してどういう自分を見せるのかを考えながら生きているということです。

「就活」では「何者」にもなれない

就職活動は、自分の持つ仮面を付け替え役割を演じて、新たな仮面を得る活動なんですよね。いかにこれまでの人生で舞台の主人公として生きてきたかを説明し、次の舞台の主人公の座を勝ち取る競争が就活です。
就活中には、ありとあらゆる部活/サークルの部長やリーダーが部屋中にあふれます。グループ面接なんかでもほんとに部長ばっかりで笑っちゃいました。(自分はリアルに1サークルの1グループの副リーダーだと話してました。課長みたいな感じです。)
まさに「理香」のように、肩書きに埋もれている人たちがたくさんいます。すごい人たちだと思うんですが、覚えてきた定型文で功績を語っても彼らについてはなにもわからないですよね。
いかにもってる仮面がきらびやかでも、彼らが求めているのは役者であり知りたいのは役者の中身ですから。

大企業か?ベンチャーか?

多くの就活生は、自分たちの知っている大企業に行きたいと考えます。
これは当然のことで、ヨーイドンで始まる説明会などにいくら参加しても、自分たちの知らない業界のニッチな優良企業なんて探し出すのは困難です。
結果、「大企業内定=勝者」という無意味な指標が形成されます。
逆に「大企業で組織の歯車なんてクソ!最初からチャレンジしたい!」「他のやつと違う自分カッケー!」タイプの人はベンチャー企業を選びます。
どの選択が正しくてどの選択が間違ってるとは言いません。ただ、規模で選ぶのだけは間違っていると思います。「こういうことをやりたい=だからこの業界」ならわかりますが、片っ端から大企業を受けているような人たちもたくさんいます。正直言って節操がないし、内定を取ることを目的化してしまっていると思います。

就職して思ったこと

転職活動をしている自分が思うのは、どんな会社に入ってもギャップはあるということです。だからこそ自分の行動原理を明確化しておかなければ、後で後悔することになります。

大きな仕事をしたくて大企業に…
全然違う部署に配属されても耐えられる?

最初から裁量を得たくてベンチャーに…
裏では資金繰り苦しくて数年で潰れるかもよ?

就活生が仮面をつけているように、企業も仮面をつけています。
自分は、やりたい業務があったので、業界が決まり、その専門部署に当初から配属される可能性が高いので今の会社を選びました。
1つは正解1つは間違い。
実際入社すると、自分の希望する業務は縮小傾向で社内ではあまりチャンスがなさそう。しかし、業界間の行き来が多いので早い段階から外の世界を考え始めています。
社会に出ると、学生からは見えなかった仮面がたくさん見えてきます。
本当は就職してからが「何者」かになるための苦闘の始まりなんでしょうね。
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何者 (新潮文庫)

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何様

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hiroki0412.hatenablog.com

*1:心理学的には外的な側面。古典劇の仮面に由来する言葉だそうです。ゲームのアレではありません。