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今日は何読もう。何観よう。

旅と読書と美味しいものと。

みんクレが行政処分を受けた件

金融 クラウドファンディング

某プロブロガーさんがまたもや炎上していると思ったら、みんなのクレジット(以下、『みんクレ』。)が行政処分を受けたとのこと。

クラウドファンディングの全体感については、以下の記事をご参照ください。

hiroki0412.hatenablog.com

 

 

 今回、行政処分を受けたみんクレは、貸付型のクラウドファンディングです。

この形式は、個人投資家から匿名組合形式で資金を集め、資金需要者に貸付を行うもの。

今回、処分の対象となったのは、「実際に募集された資金使途と異なる資金に充てられていた」点。

www.nikkei.com

株式会社みんなのクレジットに対する検査結果に基づく勧告について:証券取引等監視委員会

 

事案の、概要はSESCがまとめてくれています。

関係会社への横流しに加え社長の個人資金への流用とダブルパンチです

f:id:hiroki0412:20170326190325j:plain

出典:証券取引等監視委員会

 

 ストラクチャードファイナンス等においては、回収金とオリジネーター*1(ないしは回収する会社)の通常資金が混在してしまうリスクをコミングリングリスクとしてリスクヘッジします。

一次的な回収をオリジネーターに委託するにしても、回収後は信託銀行の信託口等に引き渡すようになっているのは、自己の資産との分別管理を行うためです。

みんクレないしは貸付型クラウドファンディング全体に通じて、言える問題が2つあります。

 

貸金業法との関係で投資先が不透明

これは本件とは直接関係ないですが、貸金業法との関係から投資家への情報開示が不十分であると言わざるを得ません。

貸金業法上、反復継続して貸付を行う場合、「業」として貸付を行っているとみなされ貸金業登録が必要となるようです。

しかし、個人に業法登録を強いるのは現実的ではありません。そこで現状は、匿名組合出資+資金需要者名非開示」という形式で乗り切っています。

その結果として、投資家からするとよくわからない先に投資している状態に陥っています。

 

②分別管理

こちらが今回問題になった点。

上述の通り、その他の金融商品の場合、各案件ごとに信託銀行に預り金(投資家の投資資金)を委託するなど、自社ないしは他案件の資金との分別は徹底しています。

しかし、貸付型クラウドファンディングを行っている企業はどこを見ても、自分たちで預り金を管理しているようで分別管理も自己責任のようです。

これは、コストをかけずに投資を行わんとするがための結果ではないでしょうか。

また、今回の資金流用は①の社名非開示の状態が一定程度助長したものだと考えています。

社名が開示できる状態であれば、架空の案件はそれほど簡単に作り出せないので、横流しも防げたかもしれません。仮に需要者の実名で資金を集め横流しを行ったとしても需要者の側も不審に思うはずです。

この件は、ある種、問題の可能性を認識しつつ放置していた監督庁の失策であると思います。

 

個人的には、クラウドファンディングというシステムそのものには期待しています。

銀行という組織は、規制が厳しくなり(トランプの登場で一次的に緩和されるかもしれませんが)取るべきリスクをとれる状況にはありません。

 

しかし、貸付型が今後コーポレートファイナンスの一角を担うには、

①情報開示により投資家がリスクを適切に判断できる状態を整備すること

②集められた資金が適切に需要者のもとへ届けられること

③デフォルト時の対応策を設定すること

あたりは、しっかり整備してほしいです。

③は今回検討しませんでしたが、多くの会社でデフォルトした債権のサービシングについて検討されていないように思います(「担保が設定されているから大丈夫」的な論調で、蓋を開けてみると第二抵当でしかないなんてこともあります)。

いまは、デフォルトが現実化していないのでよいのかもしれませんが、実際貸倒が起こった場合にリスクを投資家に負わせることができるのか…

 

 

*1:ストラクチャードファイナンスを実行する企業等

議論の必要性

日常 金融 クラウドファンディング

雑記。

上司と今後の営業計画だとかFintechがどうだとか諸々を含めて1時間程度議論した。

 

そこで、ふとそういう時間の重要性と社会人になってからそういう時間が少なくなったなぁ、と。

 

社会人になると、正直学生よりも学習時間は多いように思う(職業にもよるかもしれない)。

 

しかし、1人で情報を収集するだけではそれを自分の中で消化するには物足りない。

覚えるだけなら、読む・書くで良いがそこから新たな価値を導き出すには他者との議論が必要。

 

スッキリした頭でそんなことをふと思った。

 

FinTechの衝撃

FinTechの衝撃

 

 

 

事業戦略策定ガイドブックー理論と事例で学ぶ戦略策定の技術ー

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【映画】-20 『虐殺器官』ゼロ年代の天才は何を遺したか?

映画 金融 クラウドファンディング

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

伊藤計劃三部作最後の作品『虐殺器官』がやっと公開されました。

project-itoh.com

 9.11以降、テロとの戦いを経験した先進諸国は、自由と引き換えに徹底的なセキュリティ管理体制に移行することを選択し、
その恐怖を一掃。一方で後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加。世界は大きく二分されつつあった。
ラヴィス・シェパード大尉率いるアメリカ情報軍特殊検索群i分遣隊は、暗殺を請け負う唯一の部隊。
戦闘に適した心理状態を維持するための医療措置として「感情適応調整」「痛覚マスキング」等を施し、更には暗殺対象の
心理チャートを読み込んで瞬時の対応を可能にする精鋭チームとして世界各地で紛争の首謀者暗殺ミッションに従事していた。
そんな中、浮かび上がる一人の名前。ジョン・ポール。
数々のミッションで暗殺対象リストに名前が掲載される謎のアメリカ人言語学者だ。
彼が訪れた国では必ず混沌の兆しが見られ、そして半年も待たずに内戦、大量虐殺が始まる。
そしてジョンは忽然と姿を消してしまう。彼が、世界各地で虐殺の種をばら撒いているのだとしたら…。
ラヴィスらは、ジョンが最後に目撃されたというプラハで潜入捜査を開始。
ジョンが接触したとされる元教え子ルツィアに近づき、彼の糸口を探ろうとする。
ルツィアからジョンの面影を聞くにつれ、次第にルツィアに惹かれていくクラヴィス
母国アメリカを敵に回し、追跡を逃れ続けている“虐殺の王”ジョン・ポールの目的は一体何なのか。
対峙の瞬間、クラヴィスはジョンから「虐殺を引き起こす器官」の真実を聞かされることになる。

出典:公式HP

 

1.伊藤計劃という作家について

伊藤計劃と言う作家は、『早逝の作家』『ゼロ年代注目のSF作家』として語られることが多いです。

伊藤氏は2009年34歳という若さで亡くなったこともあり、ごくわずかな作品群を残したのみでしたが、デビュー作『虐殺器官』が「小松左京賞」最終候補作に選出され、その後は「ゼロ年代SFベスト国内編」1位を獲得するなど、デビュー当時から注目を集めます。

SF文学界において、多くの有名作品が海外作家(ディックとか)によるものであり、日本人で傑出した人物が近年見られない中であったため、『ゼロ年代(00年代)のSF作家』として注目を集めました。

※自分はライトなSF好きなので細部はわかりません。

 詳細は、以下Wikipedia等ご参照

伊藤計劃 - Wikipedia

著者インタビュー:伊藤計劃先生

デビュー当時から、これほどに注目されていたにもかかわらず肺がんにより短い生涯を終えたことは、非常に悔やまれることです。

 

2.本作が他2作より遅れて公開となった理由

本作は、伊藤計劃氏の長編3作品(『虐殺器官』『ハーモニー』『死者の帝国』ただし、『死者の帝国』は、伊藤氏の遺稿を円城塔が完結させたもの。)の1作として映画製作開始。しかし、制作会社マングローブが倒産

他2作から1年以上遅れての公開となりました。

マングローブの他作品は、サムライチャンプルー戦国BASARA(ゲーム)のムービーなど…

animeanime.jp

 『シン・ゴジラ』や『君の名は。』の大ヒットで配給会社東宝が非常に好調な決算をたたき出す一方、現場の制作会社は苦しい現状が垣間見えます。

 

3.本作のメインテーマは?

 さて、本作の本質的なテーマは何かを考えると非常に難しいことに気づきました。

虐殺?9・11後の世界?それとも言語と意識?

前掲の著者インタビューにおいて、伊藤氏自身が語っているように彼のSF感を"テクノロジーと社会の関係"として見た場合、

・様々な個人認証/追跡技術⇔9・11後の監視社会

・痛覚マスキング/戦闘適応感情調整⇔内戦世界と平和な世界

といったテロ以後の技術及び社会変化が描かれていることがわかります。

 本作でキーになるのはやはり、いくつかのパラレルな設定です。

 

先ほど挙げた9・11ないしはサラエボでの核によるテロ以後の世界として設定されているテクノロジー及び社会構造を対立軸として整理し直します。

1つ目が、"社会"について、

個人認証/追跡技術の強化により、個人の自由を制限しながら平和を得た先進国社会

テロ以前と同じく個人に自由はあるが内戦により荒廃し、虐殺地獄と化した新興国社会

 まさに、「天国と地獄」という構造です。

ラヴィスらは、アメリカ人という設定であり、虐殺の首謀者と目されるジョンを追って内戦地域とアメリカを行き来します。

アメリカでは、ピザを食べながらアメフトを見るなんの不安もない生活。

内戦地域に潜入し、虐殺の真っただ中へ。

この二元的な社会構造がポイントです(分断された社会にも理由があるとわかります)。

また、クラヴィスのチームメンバーであるアレックスは「本当の地獄は頭の中にある」と言います。

この言葉は、冒頭で述べられますが非常に示唆的な言葉です。ある意味で著者の意図を示した言葉であると思います。

 

もう一つの対立軸は、

ラヴィスらが受ける痛覚マスキング/戦闘適応感情調整

ジョン・ポールにより誘引される虐殺の器官

です。

ラヴィスがジョンと対峙した際、どのようにジョンが虐殺を指揮しているかが明かされますが、これがクラヴィスらが作戦を実行する前に受ける感情調整と無関係でないことがわかります。

ジョンが以前はアメリカ政府の庇護のもと研究していた、という設定にも注目すべきかもしれません。

 

戦争と平和、自己と意識、争いの中交錯する事象を照らし合わせて見えてくるのは、

自身の信じているものすべてが作られたもの(フィクション)なのではないか?

ということです。

 

4.まとめ-映画と小説のエンディングの違いについて

最後に映画と小説のエンディングが異なることについてちょっとだけ付言しておきたいと思います。

映画では、小説のエンディングより若干手前で終わります

小説でいうエピローグ部分が描かれないわけですが、これがあるなしでかなり印象が違います。

 小説では、最終的に社会が混沌に陥って終わります(これはクラヴィスの行動によるものですが、これも意思によるものかというとまた微妙。)

対して、映画ではそこまで描かれませんので、クラヴィスが正義のまま終わったようにも見えますし、個人的憎悪を社会にぶつけたようにも解釈できます。

是非、映画と小説を比較していただきたいです。

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

虐殺器官 (ハヤカワ文庫JA)

 

 

【映画】-19 『沈黙-サイレンス-』 信仰について改めて考える

映画 金融 クラウドファンディング

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

 

スコセッシ監督の『沈黙-サイレンス-』を見てきました。

遠藤周作さんの原作も好きですが、映画も素晴らしかったです。

chinmoku.jp

17世紀、江戸初期。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎。日本で捕えられ棄教 (信仰を捨てる事)したとされる高名な宣教師フェレイラを追い、弟子のロドリゴとガルペは 日本人キチジローの手引きでマカオから長崎へと潜入する。

日本にたどりついた彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、その中で弾圧を逃れた“隠れキリシタン”と呼ばれる日本人らと出会う。それも束の間、幕府の取締りは厳しさを増し、キチジローの裏切りにより遂にロドリゴらも囚われの身に。頑ななロドリゴに対し、長崎奉行井上筑後守は「お前のせいでキリシタンどもが苦しむのだ」と棄教を迫る。そして次々と犠牲になる人々―

守るべきは大いなる信念か、目の前の弱々しい命か。心に迷いが生じた事でわかった、強いと疑わなかった自分自身の弱さ。追い詰められた彼の決断とは―

出典:公式HP

 

なぜ苦痛がもたらされるのか?信仰を何のために守るのか?弱いことは悪なのか?

様々な答えのない問いを投げかけてくる作品です。

 

1.「宗教」=「文化」

そもそも、当時の日本ではなぜキリスト教信仰が禁止されていたのでしょうか?

 キリスト教弾圧と言えば、ローマ帝国のネロ帝を思い出します。

ローマ帝国によるキリスト教徒の迫害 - 聖書と歴史の学習館

ローマと江戸。時代は違えど、弾圧の大まかな理由は同じではないかと思います。

それは、「宗教=文化」であり、既存の文化を、ひいては文化を前提とした権力体制の維持のため、新たな価値観を排除する必要があったから、です。

 

oshiete.goo.ne.jp

本作では、特に、井上筑後守ロドリゴ神父が対話するシーンが印象的です。

領主たる井上は、ロドリゴに日本におけるキリスト教の位置づけについて語るシーンがあります。

もちろん、領主の口から権威の維持ということが直接的に説明されることはありませんが、「日本人の信じるキリスト教は君たちの思うものとは違う」と語る井上の好々爺然とした表情の裏には、開国後、列強に食い物にされつつある日本の為政者として既存の権力構造を守る意図が見え隠れします。

 

ところで、この日本人が信じるキリスト教については、「日本は沼だ。」フェレイラ師「日本人にキリスト教は理解できない。」というセリフがあります。

これは、キリスト教のデウスを絶対神・創造主と仰ぐ一神教」的世界観が、もともと自然すべてを信仰し八百万の神という多神教」的な思想が根強い日本ではうまく認識されなかったことを表現しています。

作中でも、フェレイラから「デウス=大日(太陽)」という誤解があるとの指摘もあり、この前提となる宗教的な価値観の違いが様々な対立のきっかけ担っているのではないでしょうか。

私は決して宗教学的なものや当時の歴史観に詳しいわけではないので、非常に興味深い別記事をご紹介しておきます。

www.france10.tv

 

2.宗教の必要性

先日も某若手女優さんが出家されましたね。

日本で最も信仰者の多い仏教は、形骸化が進んでいると言われ、以前の地位の復活を目指して新たな試みがいくつも始まっています。

news.nicovideo.jp

科学が世界を取り巻く以前の宗教は、「説明困難な事象」に説得的な説明を与えるための考え方でした。

病気や災害、あらゆる困難な事象が人間を取り巻くものの、多くは当時の世界では解明・解決されていないものでした。そこに宗教は、各思想にのっとり一貫した考え方を提供することで、「わからないということへの恐怖」を取り払う役目を担っていたのです。

現在では、科学が発達し、自然現象の多くは発生原因が論理的に説明されるようになりました。

宗教が担っていた「表現装置」としての役割は科学に取って代わられたのです。

結果として、現代の宗教が担う役割の大部分が、科学では表現しきれない部分、特に、死後の世界観にいったん集約されました。

 

一方で、宗教は現世での苦難に対する避難所的な役割を果たしているとも思います。

科学が席巻する世界・資本主義の社会では、ますます便利になっていくものの、息苦しさがまとわりついてくる感覚に苦しむ人たちが多くいます。

その反動として、別の価値観としての答えを求めて宗教家に悩みを聞いてもらう場というのも新たに生まれています。

vowz-bar.com

図らずも仏教の話題ばかりになりましたが、この「避難所」としての役割は、どの宗教でも変わらないでしょう。

やはり、人間には、ある程度の抽象性や創造性が必要であり、その役割を宗教は担っていくのだと思います。

 

3.日本人俳優も豪華、そして…

 

映画自体は、ハリウッド製作ですが日本人のキャストもかなり豪華です。

・キチジロー:窪塚洋介

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出典:公式HP

・通辞:浅野忠信

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出典:公式HP

・モニカ:小松奈々

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出典:公式HP

・ジュアン:加瀬亮

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出典:公式HP

おお、窪塚洋介が出てる…!あと、小松奈々ってハリウッドで知られてるのか!?とか色々考えるキャストですがそれより…

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出典:公式HP

本作メインの語り部であるロドリコ神父とともに日本に降り立つガルペ神父(アダム・ドライヴァー)です。なんかどっかで見たことあるなこの人…

johnie.hatenablog.com

カイロ・レンだ!!!(スターウォーズ7をまだ見ていない方すみません。)

スターウォーズではなかなかの腑抜けでしたが、本作では死地に飛び込む殉教者。

ロドリコ神父と比べると、若干心の弱さを見せますが…。

アダム・ドライヴァーさんは、スターウォーズでブレークしたようです。

 

4.まとめ:人はなぜ神を信じるのか?

私はそこまで信仰心があるわけではありませんが、お墓参りもしますし神頼みもします。

誰にでもある程度の信仰心はあると思います。

「神を信仰する」理由は、各人によって様々かもしれません。

私も「神の存在を信じるか?」と問われると悩ましいですし、作中のように信仰によって困難を受けるのであればすぐに信仰を捨てるでしょう。

私としては、「現世の説明困難な事象(苦難)に対する回答」を宗教(神)に求めるのであり、その宗教の信仰により苦難が降りかかるのであれば、本末転倒だと思います。

そういった意味で、隠れキリシタンの人々の強烈な信仰心は、非常に鮮烈に記憶に残りました。

 

※補足

非常に興味深かったのが、映画の全編を通して、ほぼ音楽な流れないことでした。

これはエンドロールまでそうで、その代わりを果たしたのが波の音や虫の声など自然の効果音です。そして、重要なシーンでは完全な沈黙が支配します。

まさに、タイトル通りであり感動しました。

 

沈黙 (新潮文庫)

沈黙 (新潮文庫)

 

 

神は妄想である―宗教との決別

神は妄想である―宗教との決別

 

 

『モテキ』と『東京タラレバ娘』で比較する30代男女の恋愛観

映画 金融 クラウドファンディング

久しぶりにマンガ喫茶に行って 『東京タラレバ娘』を読んできました。面白いですね。

男の恋愛応援マンガ『モテキ』が好きな自分としては、同年代の男女の恋愛観の違いが興味深かったので2作品を比べてみたいと思います。

 

モテキ コミック 1-5巻セット (イブニングKC)

モテキ コミック 1-5巻セット (イブニングKC)

 

 

東京タラレバ娘 コミック 1-7巻セット (KC KISS)

東京タラレバ娘 コミック 1-7巻セット (KC KISS)

 

 

1.『モテキ』はまず夢を見せ、『タラレバ娘』はまず現実を突きつける

2作品の全体的な世界観は対照的です。

これは男女の現代恋愛観が大きく異なっていることを反映しているからだと考えられます。

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出典:久保ミツロウモテキ』より

 『モテキ』は童貞に訪れたモテ期がテーマ。

これまでモテなかった主人公藤本幸世があらゆる女性の知り合いからモテ始める(?)話。大前提として、これまで決してうまくいってなかった恋愛が突然うまくいくので、基本的に希望に満ち溢れてます。ただ、悲しいかな、最後の最後にうまくいきません

これが童貞か…。

 

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出典:東村アキコ東京タラレバ娘』より

対して、『東京タラレバ娘』。

決して、これまでの恋愛がうまくいかなかったわけではない。ですが、色々悩んで選べずにいる間に30代。周りが幸せになっていく中、すでに女子力を飾る気もない3人は居酒屋で残った者同士「〇〇たら」「〇〇れば」と夢を語ります。

それを見たイケメンの謎の常連に「タラレバ女」と命名されます。

選び続けたタラレバ女には、ことあるごとに自分たちの置かれた現実が突きつきつけられます。ときおり幸せになるかと思わせて、一気に突き落す

女性の方が現実に対してシビアです。

 

2.男は選べず30代。女は選び過ぎて30代。

 2作品を比べておいてなんですが、男女の違いはさておき、そもそも彼らは恋愛市場でのプレイヤー層が違います。

モテキ』幸世は、30代これまでもモテなかった層。恋愛負け組です。

東京タラレバ娘』の3人は、20代の頃は、決してモテなかったわけではありません(この意味では幸世の比較対象は、いつかちゃん30歳バージョンの方が適切かもしれません)。

①異性との交際経験(20・30 代未婚の男女)

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 ②結婚に対する意向(20~40 代未婚の男女)

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出典:明治安田生活福祉研究所「2016年 20~40代の恋愛と結婚」

 明治安田生活福祉研究所の2016年の調査では、20代男性の約半数、30代でも4割近くが「交際経験なし」(グラフ①青色)。対して、女性は、20代では、34%いる恋愛未経験者も30代までには25.7%まで縮小します。

また、結婚に関しては、「できるだけ早く結婚したい」(グラフ②青色)と「いつか結婚したい」(グラフ②水色)を合わせた層は、男性は20代~30代までほぼ変わらず40%前後。対して、女性は、20代で59.0%、30代で45.7%となっています。

 

30代男女では交際経験値と結婚に対する意識に大きな開きがあり、この中心的な層の違いがそれぞれに受けるマンガの違いに表れているように思います。

つまり、

・男性側は、全然モテず、交際経験0で20代を終えようとしていることに悶々としている層。結婚を考える以前にとりあえず童貞を卒業したい。

・女性側は、恋愛は20代では困らない程度に経験してきたものの、それゆえによりよい男性を求めていつの間にか結婚から遠ざかっている層。結婚願望が強いだけに彼氏に求めるものも妥協ができずにいる。

 といった感じです。

これはやはり、女性の場合は体力的な面で出産適齢期があり、逆算して結婚しておきたいと考える年齢があるというのが大きいと思います。男性も「将来は結婚したい」「子どもと幸せな家庭を築きたい」と漠然と考えたり、周囲がどんどん結婚していくと焦りは出てくるでしょうが、女性ほどのプレッシャーはないのではないでしょうか。

3.まとめ:女性マンガ家からみた恋愛

最近では男女平等が意識されてきています。

しかし、2作品がそれぞれ人気を得たという点から、「男女の恋愛観」の中心にはまだまだ大きな開きがあるようです。

いや、むしろこの恋愛観は決して交わらないのかもしれません。

あえて、語弊を恐れずに言うと、この差は生物としての男女の差を反映しているように思います。

(あんまり言うとジェンダー界隈の人から批判を受けそうですが…)

ただ、2作品について面白いのは、どちらも女性マンガ家の作品なんですよね。

これは、単純にそれぞれ自分たちの立場で見ているものを描いたわけではないという意味で興味深いです(男性から見た女性の恋愛観も気になるところ)。

察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方

察しない男 説明しない女 男に通じる話し方 女に伝わる話し方

 

 

 

③まとめ『この世界の片隅に』ヒットはコンテンツファイナンスの新たなMakuakeとなるか?

映画 クラウドファンディング 金融

 『この世界の片隅に』が、クラウドファンディングでの調達を行い大ヒットを飛ばしたことで映画をはじめとしたコンテンツファイナンスにおける同手法のプレゼンス向上のきっかけになったかもしれません。

私はコンテンツ業界に身を置いているわけではありませんので、正確性に乏しいかもしれませんが、コンテンツファイナンスを振り返る上でのポイントは以下の通りだと認識しています。

1つ目に、これまでの主流である『製作委員会方式』。 

hiroki0412.hatenablog.com

 

次に、信託法の改正とともに実現可能となり注目されたものの、一過性のブームとして過ぎ去った『著作権信託』。

hiroki0412.hatenablog.com

 

最後に、IT技術の発達により可能となった『クラウドファンディング』。

これら3つの特徴を考えつつ、コンテンツファイナンスの未来を考えます。

※長いので3本に分けます。

3.クラウドファンディングの可能性

 最後に、『この世界の片隅に』で資金調達に使われたクラウドファンディングについてです。ここでは、Makuakeなどが実行している寄付型を検討対象とします。

 クラウドファンディングの類型については以下の記事をご覧ください。

hiroki0412.hatenablog.com

 

有名になった映画の製作費を一部でも調達されたのは本作が初めてだと思います。

www.makuake.com

クラウドファンディングのメリット

・金銭的リターン目当てではないファンから資金を集めることができる

・募集動向の良し悪しでマーケティングにもなる

クラウドファンディングのデメリット

・調達可能金額が少ない

 

クラウドファンディングは、しばしば芸術や音楽、イベント、ボランティアなど既存のファイナンス手法ではなかなか資金を調達しにくい案件がしばしば見られます。

また、募集者が個人単位であったり、中には法人が特定の商品開発のために募集するために利用している場合もあります。下記、Qrioソニーの出資会社であったこともあり、大きな話題になりました。

www.makuake.com

クラウドファンディングの第1のメリットは、金銭的リターン目当てでないファンから資金提供を受けられることです。上記のスマートロックの場合、購入型(商品の予約を含めた資金提供)と寄付型の混合系です。購入型の場合、完成した商品というリターンを期待されますが、提供金額によってはお礼メールのみで終わることもあります。また、募集動向の良し悪しで、そのイベント、商品の初期的なマーケティングになります。これまでのサービスがふたを開けてみる(販売してみる)までわからなかったのが、集まらなかった場合はサービスの練り直しも検討できます。

 

逆に、デメリットは資金調達可能額の少なさです。

日本の主要クラウドファンディング 累計支援額 月次推移 (積み上げグラフ)

出典:「日本の主要クラウドファンディング 累計支援額 月次推移

主要クラウドファンディング会社の累計支援額は、2016年11月時点で90億円弱です。

1件あたりは数百万~数千万円と、一般的な銀行借入や製作委員会方式で出資する金額より圧倒的に少ないです。

今後は、製作委員会方式で大部分を調達し、マーケティングとリスク分散を兼ねてクラウドファンディングを利用するパターンが増えるかもしれません。

 

まとめ:コンテンツ業界において、クラウドファンディングは根付くのか?

 分量が多くなったので3記事に分割しましたが、『この世界の片隅に』のヒットを期に、製作委員会方式一辺倒の同業界にクラウドファンディングがどの程度食い込んでいけるかについて考えたいと思います。

クラウドファンディングは、ファンの心をつかめれば必ずしも金銭的リターンを返す必要もないため、メリットは大きいです。

しかし、製作に必要な金額(数億~数十億)と同調達方法のマーケット規模を勘案すると、安定的に数億円の資金が調達できなければ、資金源としてクラウドファンディングが根付くことはないかもしれません。あくまで少額調達+マーケティングどまりといったところでしょうか。

 やはり、どちらかというと既存の手法では調達できにくい規模の小さな事業体等が利用するのが主流になりそうです。

 

②『この世界の片隅に』ヒットはコンテンツファイナンスの新たなMakuakeとなるか?

金融 クラウドファンディング

 『この世界の片隅に』が、クラウドファンディングでの調達を行い大ヒットを飛ばしたことで映画をはじめとしたコンテンツファイナンスにおける同手法のプレゼンス向上のきっかけになったかもしれません。

私はコンテンツ業界に身を置いているわけではありませんので、正確性に乏しいかもしれませんが、コンテンツファイナンスを振り返る上でのポイントは以下の通りだと認識しています。

1つ目に、これまでの主流である『製作委員会方式』。

次に、信託法の改正とともに実現可能となり注目されたものの、一過性のブームとして過ぎ去った『著作権信託』。

最後に、IT技術の発達により可能となった『クラウドファンディング』。

これら3つの特徴を考えつつ、コンテンツファイナンスの未来を考えます。

※長いので3本に分けます。

2.過去の遺産:著作権信託

2004年の改正信託法施行により、著作権信託が可能となりました。その結果、2009年ごろには知的財産(特許権著作権など)信託が注目されます。

 

著作権信託(資金調達)の仕組み

出典:一般社団法人信託協会著作権信託(資金調達)の仕組み

著作権信託のメリット

・資金調達額の増大

・リスク分散

著作権信託のデメリット

・スキーム設定コストがかかる

・初期製作費用は調達できない(著作権が発生している段階からの資金調達)

著作権のプライシングが困難

 

著作権信託を行うメリットは2つあった(近年では発行事例なくなってしまっており、過去形で記載します)と考えられます。

1つ目は、資金調達額の増大です。権利利用者のみで資金提供するよりも、広く外部向けに受益権を販売する方が調達できる金額は大きくなる可能性があります。状況によって、すべて外部調達にしたり、一部権利利用者が資金提供するなどいくつかの方法を使い分けることもできます。

2つ目に、リスクの分散です。外部投資家に信託受益権を販売することで、作品の失敗リスクを投資家全員で分担することができます。ただし、成功したときの収益も分散していまうことには注意が必要です。

 

デメリットは、コスト面。信託を利用することで金銭的な面と労力的な面でコストがかかります。外部投資家に受益権販売するとすると、金融商品として様々な規制を受けます。製作委員会のように仲間内で組成するようにツー・カーではいきません。

また、これが著作権信託の最もハードルの高い点だと思いますが、著作権のプライシングが非常に難しい(キャッシュフローが予測しづらい)ということだと思います。

 

hiroki0412.hatenablog.com

 資産の流動化は、「キャッシュフローが発生すれば何でもできる」とよく言われるのを耳にします。これは、ある点で正しく、ある点で間違っています。

この言葉通り、キャッシュフローが発生する資産であれば、大抵の資産は流動化し資金調達に使うことができます。ただし、その確度は、キャッシュフローの予測確度によります。

現在でも一般的に流動化が行われている資産の例は、住宅ローンです。住宅ローンの場合は、返済回数が契約時点で決まっています。また、複数の債権をまとめて譲渡することで、過去の実績から全体金額のうち、デフォルトや期限前弁済の水準もある程度予測が立てられます。これらによって、確度の高いキャッシュフローが算出できます。ただし、これもあくまで過去の実績ベースなので未来がどうなるかはわからないですが…。

 

hiroki0412.hatenablog.com

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著作権の場合は、 「今後どのように利用されるか」「どの程度利用されるか」が予測できません。たとえば、映画を作って上映したと仮定して、どの程度の売り上げが上がるのか(キャッシュフローが発生するのか)は、契約に基づいたものではないため全く予想はできないです。こういったリスクの高い商品であるため、投資家を見つけるのが困難だったのではないでしょうか(機関投資家はおそらく手を出さないので、こういった作品に興味のある個人になると思います。下記、書籍でも当初友人から募集を始めていたようです。)?

文化に投資する時代 (カルチャー・スタディーズ) (カルチャー・スタディーズ)

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 ちなみに西村あさひ編の本では、まだ「新しいファイナンス手法」として掲載されています。

 本書のロイヤルティ債権を流動化する方式であれば、将来のキャッシュフローが比較的読みやすいかもしれません(いずれにせよ金額が不透明かもしれませんが…)。

 

次回、クラウドファンディングについて検討し、コンテンツファイナンスの総括をします。