今日は何読もう。何観よう。

旅と読書と美味しいものと。

【映画】-31 『嘘を愛する女』真実の中の愛

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

上映開始当日にわざわざ見に行くことはあまりないですが、『嘘を愛する女』見てきました。

ナイトシアターでしたが、意外に9割埋まってました。 

 

 

実際の事件をもとに作られた

本作、自分の愛する人のすべてが"嘘"だったという衝撃的な内容ですが、さらに衝撃的なのは、実際の事件が下敷きになっているということです。

 

…五年間連れ添った夫が、五十歳で病死しました。そこで、奥さんが区役所に死亡届を出そうとしたところ、本人の戸籍がそこにはないことが分かったのです。奥さんが持っていた戸籍抄本のコピーは偽物だったのです。

 実は夫が亡くなる前にも、不自然なことがありました。病状が悪くなる一方なのに、夫は絶対に病院に行こうとはしないのです。そこで奥さんが不審に思って、夫の勤務先である大学に問い合わせたのですが、そういう職員はいないとのことでした。夫の身分証明書が偽物だと分かったとき、亡くなる前の夫を問いつめたことがありました。しかし、夫は死ぬ間際に「死ぬしかなかった。本当は生きていたかったんだ」とだけ言い残して亡くなりました。奥さんは、警察に相談したりしていろいろと調べたのですが、夫の身元について手がかりになるようなものは何もありませんでした。夫はいったいどこの誰だったのでしょうか。

 夫だった男は、おそらく苦労して自分の出生の物語を創作したのでしょう。戸籍抄本を偽造し、身分証明書を偽造し、自分の人生そのものを偽造したのです。こうして、つじつまの合う物語を作ることで、彼は奥さんを欺いて結婚することが出来たのです。おそらく彼には隠さなければならない過去があったのでしょう。そして、嘘の物語を作ることでしか結婚できないと思ったのでしょう。そして、実際に彼は奥さんと結婚して、五年間の幸せな人生を手にすることが出来たのです。しかし、健康保険証を持たない彼は、病状が悪化するにもかかわらず、嘘を貫くために絶対に病院に行こうとはしなかったのです。そして、最後まで自分の正体を明かさなかったのです。しかし彼の心には、嘘をついた罪を背負わなければならない悲しみと、出来ることなら本当の人生を生きたかったという、かなうことのなかった、はかない思いが交錯していたことでしょう。「死ぬしかなかった。本当はもっと生きていたかったんだ」という彼の最後の言葉は、謎に満ちた彼の人生そのものではないでしょうか。いったい本当の彼は、どこで生まれて、どのように育ってきたのでしょうか。本当の出生の物語は、いったいどんなものだったのでしょうか。しかし、彼は真実を明かさぬまま、多くの謎を残してこの世を去っていったのです。…

出典:出生の秘密とその物語

現実の事件では、旦那さんの本当の素性は明かされないままだったようです。

自分が愛したその人が、自分に嘘をついている。自分の知っている人は、実は存在しない…

実際に直面した時、この現実は受け止めきれるものなんでしょうか?

 

小説と映画の違い

小説版と映画版では、ストーリーの根幹に違いはないものの、キャラや一部の流れに違いがあります。

 

まずは、由加利(長澤まさみ)の母への紹介に現れなかった桔平(高橋一生)が見つかった場所。

小説版では、新宿駅のホームで倒れた桔平は発見され、故郷に移るまでメインの舞台は新宿でした。映画版では、由加利の家付近の公園で桔平は発見されます。新宿は舞台として全く出てきません。

 

また、映画版では心葉(川栄李奈)が追加キャラとして登場。由加利が知らない桔平の一面を知る人物としてキーマンとなっています。

しかし、小説版で探偵である海原(吉田鋼太郎)が探偵として探し出した多くの情報を、心葉から受け取るという奇異な状況にあえて設定変更する必要があったのか疑問が残ります。

 

最後に、映画版ではキャラクター全体の由加利に対する対応がより厳しいものになっているように思いました。

例えば、職場の同僚の綾子(野波麻帆)は、小説版では桔平の嘘を解き明かそうとする由加利をフォローする良き友人です。しかし、映画版では、職場での地位を奪おうとするなどライバルとしての位置づけがより強く描かれています。

また、映画版のみに登場する心葉も、桔平をひそかに愛していた人間として、恋人である由加利に対しては対抗心をむき出しにします。

由加利は、こうした周囲の人々との軋轢と桔平への猜疑心の中で、"本当に桔平を愛していたのか"と自分に問いながら、悩みながらも真実を解き明かしていきます

 

バリキャリの恋愛観

本作、バリキャリの恋愛観という観点でも興味深い点があります。

 

由加利は30歳前後の設定で、食品メーカーで新商品の企画を担当。20代を仕事に全力で打ち込み、そろそろ結婚も考えようかというタイミングです。妹が先に結婚し家族からのプレッシャーも受けています。

5年以上同棲している桔平は研究医(だと思っていた)。結婚は意識しているようで、それとなくそういった話をしてみるものの桔平はあまりその気がなさそう。

ただし、そういった状況でもちゃっかり合コンには参加。由加利が酔っ払って帰宅し、桔平に介抱される場面がいくつか描かれますが、綾子との会話から実はそのうち1度は合コン帰りであったことがわかります。

 

医者という優良物件をキープしつつ、結婚の可能性を見極めながらほかの選択肢も探し続けるというしたたかさは恐れ入ります。しかし、あくまでも仕事優先で、桔平と対立する様が描かれます。"収入の多い自分が稼ぐ"という意識が会話の随所に現れていて、とても現代的な思考だなと思いました。

 

また、一年ほど前に『モテキ』と『タラレバ娘』を比較して30代男女の恋愛観について書いたことがありました。

hiroki0412.hatenablog.com

 タラレバ娘では、仕事がうまくいくとプライベート(恋愛)がうまくいかない*1という独身女性のジレンマが描かれていましたが、由加利は仕事でも"ウーマンオブザイヤー"に輝き、プライベートでも桔平と幸せな時間を過ごしており、一見すると勝ち組的な人生を送っています。

 由加利の生活は、現代の働く女性が目指す"理想"の表れなのかもしれません

 

高橋一生長澤まさみだと絵面が美しい

 余談ですが、高橋一生長澤まさみが恋人役の映画だと絵面がとても美しいです。「嘘を愛する女」の画像検索結果

出典:長澤まさみ、高橋一生の嘘に号泣!?『嘘を愛する女』最新予告編が解禁! - 日映MovieWalker|日映シネマガ

 

まとめ:自分の愛した存在が嘘でも愛し続けられるのか?

自分の愛した存在が実は虚像だった…

実際の事件をベースにしているだけに現実にあり得ないとも言えません。

実際起こった場合、名前や出生地、仕事など、あらゆるものが嘘だと知ってもその存在を愛し続けるというのは、相当難しいと思います。

ただ、1つ言えるのは、小さな嘘であれ、大きな嘘れあれ、「なぜ嘘をついていたのか?」が重要だと思います。

その嘘の裏にある真実が自分にとってどのような意味を持つのか?

まずは由加利と同じように「なぜ嘘をついていたのか」を突き止めようとするでしょう。

そこにどのような結末が待っていようとも、真実を明かさずにはいられないはずです。

 

愛なき嘘か、愛ゆえの嘘か?

 

嘘を愛する女 (徳間文庫)

嘘を愛する女 (徳間文庫)

 

 

*1:むしろ恋愛がうまくいかないから仕事に全力を注ぐことで結果的にうまくいくということかもしれません

Fintechのカギは資金決済法だと思う

ベンチャー界隈では、Xtechというグルーピングを行うのが流行っていますが、なかでも"Fintech(フィンテック)"という言葉はすでに一般化した感があります。

今回は、Fintechという領域において今後ますます重要になると考えられる”資金決済法”を利用することで、既存の金融機関とFintech事業者のかかわり方が変化しうるということを考えます。

 

 

Fintechの定義

ここで今一度Fintechとはどういうサービスを指すのかおさらいしておきます*1

「fintech カオスマップ」の画像検索結果

出典:日本版Fintech(フィンテック)業界マップ公開 | VC Note

現時点で注目されているFintechのプレーヤーの多くは、銀行等の既存金融機関が行ってきた特定ビジネス領域のうち一部をリプレイスする形で展開しているものが多いと思います。

ベンチャー企業資本力や規制対応のハードル、既存金融機関の新たな収益源への課題感という両面から、その他のイノベーション領域以上にFintechプレーヤーと既存事業者の協業は進みつつあると認識しています。

 

これは両者にとって生存戦略と言えるでしょうが、ユーザーとしては、既存のオペレーションから覆すようなイノベーションが望みにくくなるというジレンマがあります。

 

資金決済法の位置づけ

ここでタイトルですが、この状況が変わりうる1つのカギが資金決済法だと思います。

"資金決済法"というと、マップでいうところの決済サービスに関係しそうな法律ですが、そもそもどういった取引を規制しているのかというと…

 

  • 前払式支払手段発行者(法2条第1項)

前払式支払手段発行者"は、法2条第1項において「自家型発行者(3条第6項)及び第三者型発行者(3条第7項)をいう」と定義されています。"前払式支払手段"に該当するのは、①金額等の財産的価値が記載・記録されること②金額・数量に応ずる対価を得て発行される証票等、番号、記号その他のものであること③代価の弁済等に使用されること、の3要件を満たすサービスです(法2条第1項)。

  • 資金移動業者(法2条第2項)

資金移動業者は、法2条第2項「銀行等以外の者が為替取引(少額の取引として政令で定めるものに限る。)を業として営むことをいう」と定義されています。「少額の取引として政令で定めるもの」とは、100万円以下の取引とされていますので(資金決済法施行令2条 )、銀行免許を取得せずに送金サービスを実施する場合には、100万円以下の送金にサービスの仕様を限定したうえで資金移動業のライセンスを取得することが必要となります。

  • 仮想通貨交換業(法2条7項)

仮想通貨交換業の定義は、①仮想通貨の売買or他の仮想通貨との交換②"①"の行為の媒介or取次ぎor代理③「①/②」の行為に関して,利用者の金銭or仮想通貨の管理をすることを指します(法2条7項)。ここで、①において現物取引が要件となっていることから、差金決済による場合は規制対象とはなりません。

 

上記の3分類に該当する企業は、当該法律に基づいた登録や顧客保護体制の整備が必要となります。

この資金決済法が成立するまでは、銀行業免許を有する企業以外が決済(為替)取引を行うことはできませんでした。

資金決済法により決済が解放されたことで、金融における最も根幹とも言える“顧客資産の預かり”“顧客口座間の資金移動”が事業会社でも行えるようになりました

 

ベンチャー企業が決済ビジネスに取り組む意義

特に大きな点は、預かり金としてキャッシュが自社内に滞留するということです。

まず顧客はサービス利用のために資金をサービスアカウントにプールするでしょう。 

ただ、すべての顧客が即時に決済するとは限らず、企業側から見ると自社内に一定の資金が滞留することになります。

キャッシュマネジメントさえうまく行えば、この滞留資金を次の新規投資に充当することも可能になります。

f:id:hiroki0412:20180110174417j:plain

"銀行"というビジネスモデルは、個人向けの決済用口座預金や定期預金等の形で低コストの資金を調達し、様々な投資を行うことでリターンを得ています。

決済ビジネスを取り扱うということは低利の資金調達を行うということに等しい効果をもたらしえます。

 

資金決済法のポイント

しかし、必ずしも良いことばかりではありません。銀行においても自己資本比率規制と預金保険機構による預金保護があるように、当然ながら他人の資産を預かっている部分には保護の規制があり、上記の分類合わせて供託義務が設定されています

f:id:hiroki0412:20180110175816j:plain

 前払式支払手段発行者の場合は、基準日(3月31日及び9月30日)において、前払式支払手段の未使用残高が1000万円を超えるときは、その基準日未使用残高の2分の1以上の額に相当する金銭を、基準日の翌日から2ヶ月以内に、発行保証金として主たる営業所・事務所の最寄りの供託所に供託する義務を負います(第14条第1項、施行令第6条、府令第24条第1項)

資金移動業者の場合は、基準期間*2に、送金途中にあり滞留している資金の100%以上の額*3を、当該期間の末日(同号において「基準日」という。)から一週間以内に、その本店の最寄りの供託所に供託する義務を負います。

 

実際にこの供託義務はベンチャー企業のビジネスモデルにおいても影響を与え始めており、中古品のネットフリーマーケットで国内でユニコーンと呼ぶにふさわしい成長を遂げたメルカリもこの資金決済法の供託義務関係でサービスを若干変更しました。

president.jp

www.nikkei.com

 

名前が紛らわしく勘違いされがちですが、この法の規制に服するかどうかは、必ずしも決済サービスを行っている否かで判断されません

上記メルカリのような、サービスの一部として資金預かりや資金移動と呼べる作りこみがなされている場合、同法の適用可能性が高まります。

サービスのUXを検討する際には、同法の規制を意識しながらプロダクトの全体像を計画しなければ、後々予期しないキャッシュ負担やUXの変更を迫られる可能性があります。

今後のFintechに関する予想

資金移動は、本来的にはどんなビジネスを行う上でも発生しうるものです。

その点を踏まえると、今後は事業会社によるFintechサービスの展開が増えてくるのではないかと予想しています。

これまでも、メーカーにおいては自身の製品を購入するユーザーに自身の子会社を使ってファイナンスするということは決して珍しいことでありませんでした。

例えば、自動車メーカーがtoC向けにオートローン子会社を保有していたり、重機メーカーもtoB向けにファイナンス子会社を保有しています。

こういった流れは、Fintechで見ると、Amazon楽天が出店者向けのファイナンスを行ったり、ZOZOTOWNでツケ払いを行うなどが該当すると思います。

将来的なFintechにおいては、事業会社自身での展開分野がさらに広がり、自社で資金移動まで行うことを含めたサービスの開発が進むことになるでしょう。

 

既存の金融機関との関係では、しばしば「旧弊的な金融ビジネスはFintechにより破綻す

る」と言われますが、私は決してそうは思いません。

toCtoBいずれにおいても顧客との窓口を失う可能性が高まり、地位の相対的下落は免れませんが、これまでのメーカーファイナンスにおいて、債権の流動化によりかかわっていたように、決して金融業者としての存在意義がなくなることはないと思います。

 

例えば、上記の資金決済法に係る供託に代えて、一定の要件を満たす銀行による保証保全契約の締結により代替できる規定(法15条、44条)があります。

f:id:hiroki0412:20180110184858j:plain

これにより、保証料を支払うことで、供託の義務を免れ、事業者に一定の信用事由などがあった場合は、保証銀行が代わりに供託金を供託します。

これには、実質的に、事業者が銀行からデットファイナンスを受けているのと同様の効果が期待できます。

銀行から借り入れ等を受ける場合と比較すると、①資金使途の縛りが緩い②明確な返済期限がない、などの優位性があると思います。

 

hiroki0412.hatenablog.com

 

このように、様々な企業がFintechを用いて金融サービスを行うチャンスが生じており、既存金融機関としては、事業者が生み出すサービスを踏まえて今後のかかわり方を柔軟に変えていかなければなりません。

欧米的な分類に依拠すると、商業銀行業務依存の強かった日本の金融は、マイナス金利やFintechの浸透により、投資銀行業務への注力を余儀なくされるのではないかと思います。

 

決済サービスのイノベーション―資金決済法で変わるビジネス・生まれるビジネス

決済サービスのイノベーション―資金決済法で変わるビジネス・生まれるビジネス

 

 

実務解説  資金決済法〔第3版〕

実務解説 資金決済法〔第3版〕

 

 

 

*1: 図は、2016年1月時点で作成されたものであり、すでに2年が経過しているためプレイヤーは増加しているはずですが、サービスが立ち上がって来ているビジネス領域としてはあまり変わっていないので全体間の共有として引用しました。

*2:供託・保全契約は1週間ごと、信託契約は毎営業日ごと

*3:ただし、滞留している資金と還付手続に必要な資金の合計額が1,000万円以下の場合には1,000万円が最低要履行保証額になります。

2018年の抱負

皆様、あけましておめでとうございます。

 

今年も、朝から天気よく初日の出がきれいに見えました。

今年はおみくじも「大吉」です。いいことありそう。

 

f:id:hiroki0412:20180101102538j:image

 

昨年も1年の目標を立てたので、今年も目標を立てたいと思います。 hiroki0412.hatenablog.com

 

1.TOEIC点数アップ

昨年は、オンライン英会話のスタートを目標にしていました。

結果として、オンライン英会話自体は始めることができましたが、英語力という効果に現れなかったようです…

実際TOEICの点数も580→600→585という悲しい状態に。

今年は、TOEICの点数の向上を目標にしたいと思います。

まずはこの1年で700点まで上げたいです。

 

2.知識習得継続

昨年も証券アナリストの1次試験の合格やウィスキー検定の取得など目標通りにいきました。

今年も下のような知識習得を続けていきたいです。

宅建

昨年受験(2年ぶり4回目)ものの、失敗。そろそろ取得したいです。
証券アナリスト(二次試験)

1次試験終了したので、今年で完了したい。
・相続関連(FP)

相続についてわかる人間がいないため、事前に勉強したい。
・プログラミング

「データがないなら作ればいいじゃない」ということで、データ分析のためクローラー作成の勉強中。

 

3.ブログ内容多様化

 映画ブログと化していますが、もう少し内容の幅を広げていきたいです。

特に、金融関連については、気になったニュースなどをまとめていきたいと思います。

 

 

今年もよろしくお願いいたします。

2017年上映映画雑感

1年が過ぎるのは早いですね。

2017年ももう終わりです。

自分の中では、会社で部署異動があり、かなり大きく環境が変わった1年でしたが、経済的には安倍政権の続投が決定し、緩和継続・株高維持*1という比較的よい環境が続きながらも消費まで効果が及ばずデフレを脱しきらない1年でした。

さて、日本映画業界的にはどうだったのか?昨年(2016年)は、東宝が『シン・ゴジラ』『君の名は。』のメガヒットを連発し、まさに映画業界はフィーバーでした。

これには、モノ消費からコト消費へ(体験への消費移転)というトレンドにも合致した結果ではあるのでしょうが、2017年は日本映画業界にとってどのような年だったのでしょうか?

そして、主に私の見た映画の感想を記録するためのこのブログ、今年も何本か映画を見ましたがその内容を総括しておこうと思います。

 

 

国内映画は、大きなヒットに恵まれず

2017年の映画興行収入ランキングは、以下の通りです(かっこ内は興行収入)。

1位:美女と野獣(124億円)

2位:ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅(73億円)

3位:怪盗グルーのミニオン大脱走(73億円)

出典:2017年日本国内映画興行収入ランキングTop50【PRiVATE LiFE】年間ランキング

 

対して、2016年の興収ランキングは、

1位:君の名は。(235.6億円)

2位:スターウォーズ フォースの覚醒(116.3億円) 

3位:シン・ゴジラ(82.5億円)

出典:2016年日本国内映画興行収入ランキングTop50【PRiVATE LiFE】年間ランキング

 

それにしても昨年の『君の名は。』の興収は頭1つ抜きんでています。

同じサイトから過去のランキングを見ると、直近で同程度のヒットとなったのは、2014年の『アナと雪の女王』(254.8億円)、国内映画で直近最も興収が高かったのは、2013年の『風立ちぬ』(120.2億円)でした。

残念ながら今年は、国内映画でメガヒット(興収200億円超)は生まれませんでした…。

100億円前半で大ヒットと呼べる作品*2としても、今年は国内からは生まれなかったようです。

 

2017年1月~12月に見た映画まとめ

私自身もランキング記載の作品やそうでないものを含めて映画を見てきました。

いくつかピックアップし、振り返りたいと思います。

シリーズ連続もの

ファンタスティックビーストは、「蛇足では?」という私の当初の偏見は裏切られとても良い作品で、次回作に期待が高まります。

hiroki0412.hatenablog.com

 逆にバイオハザードはシリーズの最後にやらかしたという感じです。そもそもノベライズを読まなければ入口から状況が理解できないってどうなんだ…

hiroki0412.hatenablog.com

 

アニメ作品

森見登美彦『夜は短し、歩けよ乙女』は、大学生のバイブルですが*3、特に京都で大学生活を過ごした私としてはなつかしさに涙が出そうでした。

hiroki0412.hatenablog.com

 『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』は、『君の名は。』の影響からか当初一般層含め注目を集めたものの、その難解なストーリーからか失速。最終的な興収は15億円に留まったようです。

個人的には、シャフトも新房監督も好き(化物語が好き)なので、よかったんですが…

hiroki0412.hatenablog.com

 

ノンフィクション

 遠藤周作原作の『沈黙』。

原作も自分の読んだ本で3本の指に入る素晴らしい作品。

本作も、スコセッシ監督により映画として良作です。沈黙のタイトル通り、登場人物のセリフは少なく自然の音に包まれます。

hiroki0412.hatenablog.com

ダンケルク』 も同様に“非常に静かな”映画でした。セリフが極端に少ないのに加え、戦争映画にもかかわらず戦闘シーンなし。

“生への執着”というテーマが強調されています。

hiroki0412.hatenablog.com

 SF 

虐殺器官』はアニメですが、あえてSFに分類。

ゼロ年代の天才と呼ばれながら早逝した、伊藤計劃が遺した3作品のうち1つです。

日本人のSF作家がなかなか現れない中で貴重な人材だった分非常に残念です。

hiroki0412.hatenablog.com

 

 "攻殻機動隊"シリーズを実写ハリウッド映画として公開されたのも2017年でした。

蓋を開けてみると…うーん…

攻殻機動隊自体、それぞれの監督によってかなり作品の色に幅のある作品ですが、このハリウッド映画版も新しい軸としての”攻殻”として今後の評価に加わるのかもしれません。

hiroki0412.hatenablog.com

 

 1982年に公開された『ブレードランナー』の35年ぶりの続編『ブレードランナー2049』。前作のカルト的人気に対し、本作はあまり好調な滑り出しとは言えなかったようです(興収11億円)。

しかし、前作も長い年月をかけてその地位を確立したため、もしかするとこの作品もSFにおける地位を今後築きあげていくのかもしれません。

hiroki0412.hatenablog.com

 

2018年上映予定作品

2017年は、個人的には海外作品で注目作品がちらほらありましたが、国内は小粒でピンとくるものはありませんでした。

さて、2018年はどうなるのか?最後に現時点での公開予定作品から注目作をピックアップしておきます。

movie.walkerplus.com

リメンバー・ミー

ディズニー/ピクサートイストーリー3』の監督の最新作。

未来のミライ

サマーウォーズ』『バケモノの子』の細田守監督最新作。

ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生

『ファンタスティック・ビースト』の最新作が早くも来年公開。

ジュラシック・ワールド/炎の王国

2015年公開の『ジュラシック・ワールド(ジュラシック・パーク4)』に続く5作目。

 

来年も映画ライフが楽しみです!!!

*1:株式市場は今年も話題に事欠かない1年だったようです:このIRがすごい!上場企業2017(前編) : 市況かぶ全力2階建

*2:例年であれば興収1位程度です。

*3:もう一つのバイブルはNetflixにあります:四畳半神話大系 | Netflix (ネットフリックス)

【映画】-30 『ザ・サークル』今そこに迫る、利便性と人権の相克

※この記事は、映画の内容について若干のネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

 『ザ・サークル』見てきました。

"SNSサスペンスエンタテイメント"って今後もこの作品以外登場しそうにないカテゴリーです…。

gaga.ne.jp

 

 

エマ・ワトソンが超適役だと思う

本作は、トム・ハンクスジョン・ボイエガ*1など、俳優陣の中でも主人公役エマ・ワトソンの適役さが印象的でした。

「エマワトソン」の画像検索結果

出典:amazon

24歳のメイは、幸運を手にし、アメリカの片田舎から誰もがうらやむ世界的なSNS企業"サークル"社に入社します。入社後すぐに優秀な結果を残し、CEOであるトム・ハンクスから新サービスのインフルエンサーに抜擢されるメイですが、演じるエマ自身とも重なるようなキャラクターです。

エマの出自は、パリ生まれオックスフォード育ちとセレブな経歴ですが、『ハリーポッター』シリーズのハーマイオニー役で一躍スターに踊り出るなど、サクセスストーリーとして共通するように思います。

また、下記のようにエマは才色兼備と呼ぶにふさわしく、学問においても優秀なようです。

2006年にGCSE(General Certificate of Secondary Educationの略。英国の義務教育の修了証)を受けた。エマは仕事と学校の両立で合格できるか心配していたが、撮影の合間に家庭教師とともに勉強に励み、優秀な成績をおさめて合格した。全国統一試験制度(GCSE)では10科目受験し、8科目が最高のA+評価、2科目がA評価という好成績を修めた。イェール大学、ケンブリッジ大学などにも合格したが、リベラル・アーツ教育のアイヴィー・リーグ名門校のブラウン大学に進んだ。

出典:wikipedia

本作の前提となるメイの"若手キャリアウーマン"像を表現する俳優として最適な人物だと思います。 

 

ソーシャルメディアが人権を侵害し始めたらどうするべきか?

 本作は、分類的には近未来SFにあたるかと思います。

現実の我々の社会でもそうであるように、ソーシャルメディアの急速な普及が個々人のリアルタイムな言動を共有できるようにしただけでなく、より詳細な趣味嗜好などの個人にかかわるデータをもたらし、ビックデータ解析による最適なサービスの提供を可能としています。

しかし、それは一方で、本作の中心テーマである"テクノロジーの進歩とプライバシーとの相克"というリスクをはらんでいます。

プライバシーの権利そのものは、インターネットの普及により重視されてきているものの旧来から認められた権利です。

www.bengo4.com

より多くのデータを取得し、より良いサービスを提供することを追求していくと、必ず"見せたくない部分を見せない"権利と衝突する場面が出てきます。

 

ソーシャルメディアでは、ネットワーク外部性が働くぶん、サービスを利用せざるを得ない状況を作り出し、普及してしまうとプライバシーを守りたい人たちにも情報の開示を迫るという危うさを孕んでいます。その点では、情報化社会は、このプライバシーの権利をいかに守りつつ、利便性を追求するのかは今後必ず議論されるでしょう。

 

本作においても、メイは新サービスのインフルエンサーとして、自身のプライバシーを捨て様々なデータを提供することで"サークル"社のサービスの利便性を証明し称賛される一方、家族や友人をもプライバシーのない環境に巻き込むという、情報化社会の負の側面が描かれています。

 

リベラルな思想を追求していくと、経済的自由と個人的自由の対立した状況は非常に興味深い議論です。

近代の社会的公正を重視するソーシャルリベラリズム的視点で見れば、個人の不利益を是正を支持するでしょうし、より原理的(ネオリベラリズム)な思想に立てば、社会全体での経済的利益をより向上させる、情報開示の推進を擁護するでしょう。

結局は正解などないのですが、極端な利便性の追求の先に待ち受けているのは、ハクスリーの描くようなディストピアでしかない気がしてなりません

 

まとめ:実際に起きうるし、もしかしたらもう起きているかもしれない

例えば、Twitterなどでは実名登録者の住所を割り出すなどという行動が散見されます。

これはサービスの問題ではなくユーザーの倫理観の問題ですし、それ自体はそもそもなんの利便性向上にも資さない悪質ないたずらでしかありません*2

このように、『ザ・サークル』で想像されたようなサービスが実現されなくとも、現実にプライバシーの侵害は起きうる問題です。その点では、近未来SFと書きましたが、現実問題ととらえてもよい内容です。

IoTなど、テクノロジーの進歩は決して否定するものではありません。

ただし、今後、様々な場面にインターネットやテクノロジーが浸透していくと予測されている中で、私たちは予期せぬ形で自分たちの情報が他人に見られる可能性があることを理解し、サービスの利用を進めていくことが必要になると思います。

 

 

 

 

 

 

*1:スターウォーズシリーズのフィン役で一躍有名になりました。

*2:犯罪者やマナーの悪いユーザーへの見せしめ的にこのような行動がとられることが多いですが、決して"正しい"行動とは言えないと思います。

ベンチャー経営陣に知っておいてほしいデットファイナンスの知識

ベンチャー企業の方々と多く接するようになり、気になっていることがあります。

ベンチャー企業の経営陣は、プロダクトのプロであってもファイナンスについては必ずしも詳しくない場合がしばしばかと思います。

しかし、サービス開発のために投資を行うには資金が必要です。

その資金をどのように調達してくるのか?近年は、ベンチャー向けのファイナンスも充実してきており、調達方法も優先株・CB・ローンなど多様化していると思います。

 

とはいえ、実情としてIPOまで(もしくは、レイターステージ程度まで)ほぼエクイティファイナンスのみで調達し、デットでの調達に慣れていない企業も多いのではないのでしょうか?エクイティであれば、最近は起業家向けの本も出版され始めており、勘所の理解も進んでいるようですが、ローンはどうでしょうか?

「調達できれば、エクイティ、デットどちらでも構わない」という経営者の方が結構いらっしゃったので、そもそもファイナンス方法が違うと評価の基準が違うということを知っておいてほしいと思い、デットファイナンスを行う上でのポイント簡単にまとめてみました。

 

 

ベンチャーの資金調達動向

まずは、直近(2017年上半期)のベンチャーの資金調達動向について、おさらいとしてこちらのNewsPicks記事を共有しておきます。

newspicks.com

 

f:id:hiroki0412:20171125205519p:plain

出典:NewsPicks

まず、2017年上半期の資金調達状況としては、2016年上半期と同程度の水準で1,083億円の調達が行われています。年間でも去年並みとなれば、2012年を底としてベンチャーファイナンスの拡大基調を継続することとなります。

一方で、昨年対比で約37%とであり、現状のペースを維持した場合は、昨年よりも調達社数が減少することになりそうです。

f:id:hiroki0412:20171120213058p:plain

出典:NewsPicks

続いて、企業の設立後経過年数別調達金額中央値の推移です。

こちらを見ると、全調達金額の推移と同様に2012年以降、それぞれの区分で金額の上昇がみられます。先ほどの社数が少ないにもかかわらず、総調達金額が前年並みであるのは、1社あたりの調達額が増加しているからであると言えそうです。

また、これは推測ですが、特にアーリー~レイターステージでの資金調達において、近年Valuationが 上昇し、ベンチャー企業にとっては希薄化を抑えつつ大きな金額の調達を行えるようになってきているとも考えられます。

 

なお、ここで調査されているのはあくまでもエクイティファイナンス(CBの発行等含む)です。

その点でも、ベンチャー企業の資金調達においては、エクイティファイナンスが主流であるといえます。

エクイティとデットの違い

前述のとおり、ベンチャーファイナンスのメインストリームであるエクイティファイナンスは活況を呈しています。

こういった状況ですので、ベンチャー企業としては、調達の多様化としてデットの検討を考える際にもかなり強気で考えている場合が多いように見受けます。

しかし、デットは性質上全くエクイティと異なりますので、第三者割当増資により調達ができたからと言って借り入れができるとは限りません。

 

ここでは、エクイティとデットの性質上の違いをまとめておきます。

ちなみにここでは簡略化のためエクイティ=普通株、デット=シニアローンとして説明します。

 

f:id:hiroki0412:20171210164208p:plain

ポイント簡単に説明すると、エクイティファイナンスと比較した場合のメリットは、大リューションを引き起こさないこと。デメリットは、期日における元利金償還の義務が発生することです。

資金提供者としては、エクイティファイナンスが大幅な成長によるアップサイドの期待(ハイリスク・ハイリターン)とすると、デットファイナンスは持続的なキャッシュフローに基づく安定したリターンの期待(ローリスク・ローリターン)を指向します。

 

信用保証協会保証付融資/日本政策金融公庫融資は入口に過ぎない

「某メガさんや地銀さんがむしろ借りてくれって言ってくる!」

「いやいや、うちは創業1年でもうローン調達したよ!」

という皆様。

ちなみに、それは“信用保証協会保証付”や“政策金融公庫”のローンではないでしょうか?

これらの借り入れを否定するわけではありませんが、保証協会保証や政策金融公庫のローンはいわゆる民間金機関の融資要件とは異なる特殊な商品であることを認識いただきたいと思います。

信用保証協会保証

信用保証協会保証付ローンとは、その名の通り、一般社団法人信用保証協会が事業者の借入に対する連帯保証を行う商品です。

中小企業で無担保での融資検討が難しくても、信用保証が付保されれば、実質的に貸し倒れリスクを外部に転嫁できるため、とりあえず提案する商品です。

下の申し込みフローのとおり、原則金融機関からの保証依頼により審査のうえ保証・融資がなされるため、金融機関から提案を受けている企業も多いのではないでしょうか?

www.zenshinhoren.or.jp

保証協会のメリットは、なんといっても保証協会審査さえ通れば、各金融機関の審査は比較的簡単に通るということです。信用保証協会が信用リスクを原則追っているので当然といえば当然です。

注意点としては、

①金融機関が保証協会の会員でないと利用できない

②各保証制度ごとの限度額がある

金利に加え、保証料が別途かかる

という点が挙げられます。

一般的に金融機関から提案を受けて検討すると思うので問題はないと思いますが、保証協会の利用は会員である金融機関のみとなります(①)。自社で協会に直接問い合わせる際は、すでに取引がある(話をしている)金融機関が対応していない場合もありますので注意してください。

また、 保証制度は細かく分かれており、各制度ごとに保証限度額が決まっています(②)。アーリーステージであれば十分足りるでしょうが、レイター程度まで成長しており、十数億円の調達を行っているような方だと物足りなく感じるかもしれません。

最後に、一般的な無担保ローンと比較すると、保証料分の追加コストが発生する分全体での支払手数料は高くなります。ただし、一般的に説明されるエクイティの期待リターン(IRRで数十%)と比較すると年間高くとも1桁%前半であり、調達コストは相対的に低くなるはずです。ただし、期中利払い等定期的なキャッシュマネジメントが必要になります。

 

政策金融公庫融資

次によくベンチャーデットファイナンスで見かけるのは、日本政策金融公庫です。

彼らは政府系金融機関で、商品は多岐にわたりますが、原則各商品の条件に合えば実行される"制度融資"になります。

掲げられた条件に合えば実行される、かつ、政策的意義が強いためその条件も民間の金融機関よりも緩くなっています。

挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)|日本政策金融公庫

政策金融公庫の特徴は、中小企業向けにメザニンファイナンス*1を提供している点です。

主に、新株予約権付ローンと資本性(劣後)ローンがあります。

新株予約権は、ストックオプション(SO)として、ベンチャー企業においてもなじみがあるでしょうし、新株予約権社債(CB)であれば、発行・調達の経験のある企業もあるかと思います。

ここでは、資本性ローンについて、概念を説明します。

政策金融公庫の資本性ローンは、①5年超②劣後特約*2③業績連動金利が原則となっており、これらを満たすと銀行の自己査定において作成される実態BS上一部資本とみなされる商品です。

金融機関、特に銀行は、ローン実行にあたって、事前に借入人の資産や収益性などの評価を行い、各借入人(債務者)の区分*3を決定します。これが自己査定です。

以下は、会計BSと銀行評価BSのイメージです。

会計上は単なる負債科目が増加しますが、銀行評価上は一部資本として認められるため、自己資本比率などの財務指標が実際より向上します。

f:id:hiroki0412:20171210153804p:plainf:id:hiroki0412:20171210153846p:plain

資本性ローン単体では、どういう意味があるのかわからないかもしれませんが*4、これは今後のデットファイナンスを行う上で効果を発揮するものです。

 

ただし、資本性認定には制限があります。

下に資本性のイメージを作成したものを記載しました*5

f:id:hiroki0412:20171210162034p:plainf:id:hiroki0412:20171210154105p:plain

年限を5年とすると*6、1年経過ごとに資本性が20%ずつ減価していくことになります。

ここで注意していただきたいのは、あくまで評価上の資本性が低下していくだけであり、元本の償還タイミングとは無関係であるということです。

 

デットレンダーとの円滑なコミュニケーションのために

 以上のような前提の下で、今後、資金調達の拡大を図っていくためにデットレンダーである民間金融機関とどのように対話していけばよいか、簡単にではありますが、ポイントのみまとめておきました。

ベンチャー経営陣の皆様には、エクイティファイナンスと同時にデットファイナンスのタイミングも入念に検討いただき、事業のスケールに合わせた調達を行っていただければと思います。

一般的な基準

①債務者区分

「原則、"正常先"であること。または、"要注意先"に区分されるが、今後の計画上早期に"正常先"への引き上げが見込まれること。」

下記は、区分イメージです。

f:id:hiroki0412:20171210164043p:plain

金融機関に限らず、掛取引を行っており企業であれば、ここまで精緻にではないにしろ、売掛先の信用状態を把握し区分を評価したうえで引当処理を行っているはずです。 

一般的には、正常債権の範囲(正常先/要注意先)でなければ、取引の対象になりません。新規案件の取り組みであれば、そもそも正常先の範囲に入ることが前提だと認識いただいて差し支えありません。

 

②利益指標

「直近決算期で当期純利益(もしくは経常利益)が黒字である、または、赤字であるが早期に改善の見込みであること。」

 特にデットレンダーは、将来期待(事業計画)ではなく、過去の結果(決算)を重視します。直近期赤字である時点でかなり厳しく、2期連続だと相当苦しいです。上記債務区分上の「要注意先」以下に区分される可能性が高くなるため、新規実行はハードルが高くなります。不可能ではありませんが、改善する相当程度の蓋然性がある必要があります。

 

③資産評価

「実態バランスシート作成後、債務超過(後述)とならないこと。」

銀行では、受領した決算書をもとに、審査の過程で"実態バランスシート"と呼ばれる評価上のBSを作成します。これは主に、資産サイドを、簿価から現時点での評価額に算定しなおし、減価相当金額がある場合は純資産から差し引きます。

この際、純資産(自己資本)が薄い場合、負債が資産を上回りバランスしていない状態となる場合があります。これを"債務超過"といい、この場合も債務者区分における"破綻懸念先"以下の区分判断となることから新規取引だけでなく、取引の継続も困難となる場合がほとんどです。

 

資金使途

エクイティファイナンス時にはそこまで重視されませんが、ローンでの調達時には資金使途(借り入れの目的)が重視されます。

基本的には、①設備投資②運転資金のいずれかでなければローンの対象となりません。

 ここでいう①設備投資は、例えば、工場を作ったり、機械を新たに導入したりといった資金を言います。システム投資は、銀行では設備投資としてみていません。また、②運転資金も、例えば、商品を仕入れてから販売するまでの資金ギャップを指しています。しばしばIT企業がスケールするうえで必要な人件費や広告費は、含まれていません*7

 

創業3〜5年経過前後がポイント

 原則として銀行は経常利益(または当期純利益)ベースで直近期赤字の企業に対してローンを実行することは避けたがります。これは、上述の債務者区分で、要注意先以下の分類になる可能性が高く、引当コスト等を勘案するとリターンが見合わないためです。あくまでも回収可能性を見ているので、エクイティと評価が最初に分かれ始めるポイントであると思います。

ただし、「創業(会社設立)から●年以内の赤字であれば正常先に分類可」といったルールになっている金融機関が多いです。この許容範囲も3〜5年で各社異なるので確認が必要です。

この「創業赤字」ルール内で正常先判定されていたのが、赤字期間が長引き創業赤字と判定されなくなってしまうと急にローンの新規調達はおろか既存分のリファイナンスでさえ困難になる可能性がありますのでご注意ください。

 

債務超過には要注意

 上述の通り、債務超過は金融機関が評価するうえで重要な基準です。債務超過判定がなされると新規取引では一発アウトと考えていただいて構いません*8

ベンチャー企業の多くは、デットファイナンスの経験が浅いため、BSの状態まで把握されていないことがあるようです。事業計画を作る際に、今後の赤字予測と繰り延べ損失、資本性ローンがある場合は資本性認定率を加味し、計画上の賞味純資産がどの程度あるのかはぜひ認識していただきたいです*9

エクイティファイナンスや上述の資本性ローンなどを組み合わせて、債務超過にならないように意識していただければと思います。

 

誰の権限で実行できるか?

 これは、非常に政治的かつ営業的な観点ですが、金融機関において“誰の権限”で実行できる取引なのかを意識していただくと調達がよりスムーズにできるようになるかと思います。

ベンチャーにおいてもIPO直前等になれば、一桁後半億円単位のデットファイナンスを必要とするかもしれませんが、エクイティファイナンス間のブリッジや不足分の調達であれば、2,3億円で十分足りるのではないかと思います。

例えばメガバンクの○○支店から取引の提案を受けたとします。

都銀等の場合、ざっくりですが5,000万円~1億円までの取引であれば、比較的進めやすい金額という認識です。これは、案件の決裁権限が上記金額までは支店長決裁でよく、役員や審査部長等の決裁を要しない分営業サイドとしても取り組みやすい金額感を指しています。

例えば、総額で2億円のデットファイナンスが必要な場合でも、○○銀行から2億円全額を借りるのか、○○銀行と××銀行から1億円ずつ借りるのかは、こういった観点も意識しつつ検討していただけるとより調達がスムーズになると思います*10

 

まとめ:スケールするためにデットファイナンスが根付いてほしい

マイナス金利の導入以降、法人取引ではスプレッド環境が続いており、金融機関はローンを含めた運用対象の選定に苦慮しています。

メガバンクでは、支店網や中小企業取引の縮小等も検討されているようですが、今後ローンの資金需要が見込めるベンチャー企業については、金融機関側でも収益性が高く有望な取引先であると思います。

ベンチャー企業にとっては、環境が整ってきつつあるとはいえ、やはりダイリューションや株主数の増加によるコントロールの難航を考慮すると、エクイティファイナンスでシリーズC、Dと複数回の調達を重ねvaluationを数百億円に高めるのは難しいという印象です。

金融機関の立場で、ベンチャーファイナンスの一端に携わると、お互いの論理を理解するということがまだまだ必要と思うものの、ぜひともベンチャー企業においてもデットファイナンスがより戦略的になされるようになれば、願うばかりです。

 

※おまけ 参考資料

 金融機関がどんなポイントを見るのかは下記の本が最もまとまっています。

要求される資料についてもイメージが載っているので参考にしてみてください。

企業審査ハンドブック

企業審査ハンドブック

 

金融庁 資本性借入金紹介資料

資本性借入金は、計画的に利用すると、普通のローンの借り入れにも良い影響を与えると思います。その特性については、上述の通りですが、金融庁が基準を示しているので、詳しく知りたい方は金融庁HPなどをご覧ください。

金融庁ホームページ

http://www.fsa.go.jp/common/about/shihonseikariirekin.pdf

 

 

*1:メザニン=中二階。デットとエクイティの中間的な特徴を有するファイナンス手法を指します。CBや優先株、劣後ローンなどが含まれます。

*2:金銭消費貸借契約において、借入人の法的破綻時に、当該債権の請求権が他の債権に劣後する旨を定めた特約。最終的な回収時の優先順位が低くなる。

*3:掛取引を行っている場合には、事業会社でもより簡便的にではありますが債務者の区分を設定しているはずです。

*4:実際、この"資本性"の意味を分からず借りているベンチャーさんもよく見かけます。 

*5:本来はさらに利払いが必要ですが、今回は簡略化しています。

*6:上述の通り、"5年超"であることが資本性ローンの要件の1つとなっているため、実際には政策金融公庫の商品でも最短で年限は5年1か月からです。

*7:あくまで原則です。この点は、優秀な営業担当であれば適当な理由をつけてねじ込んでくれると思います。

*8:既存の大口取引先などでは、債務超過でもすぐさま回収せず取引継続を決定する場面もありますが、それは"企業再生"案件という特殊事例です。

*9:ほとんどのベンチャー企業で、事業計画は販売計画/人員計画/利益計画といった予測だと思います。BSまで作るのはコストがかかるかもしれませんが、ぜひここに自己資本の食いつぶし状況も入れてほしいものです。

*10:決裁権限の基準は各金融機関で異なるので、取引検討先の営業担当者との話の中で聞いてみてください。仲のいい方や素直な人であれば教えてくれます。

【映画】-29 『ブレードランナー2049』満を持して封切のSF金字塔続編

 

※この記事は、映画の内容について重要なネタバレを含みます。ネタバレを好まない方は映画を見た後お読みください。

 

予告を見て待ちかねていた『ブレードランナー』続編を見てきました。

www.bladerunner2049.jp

初版から、35年の時を経て公開された続編は、ファンにとってはまさに"待望"と言ってよいでしょう。

私は、残念ながらリアルタイムを経験していない層ですが、後続のSF作品に多大な影響を与えた前作からどのような新たな指針を示すのか、興味深く足を運びました。

 

ブレードランナーとは?

そもそも『ブレードランナー』がどういった作品かを知らない層が大半だと思います。

(私自身、現在25才であり前作公開当時はこの世に影も形もありません)

2019年11月のロサンゼルス。環境破壊により人類の大半は宇宙に移住し、地球に残った人々は人口過密の高層ビル群が立ち並ぶ大都市での生活を強いられていた。宇宙開拓の前線では遺伝子工学により開発されたレプリカントと呼ばれる人造人間が、過酷な奴隷労働に従事していた。しかし、レプリカントには製造から数年経つと感情が芽生え、主人たる人間に反旗を翻すような事件が多発する。レプリカントは開発したタイレル社によって安全装置として4年の寿命が与えられたが、後を絶たず人間社会に紛れ込もうとするレプリカントを「解任(処刑)」する任務を負うのが、警察の専任捜査官「ブレードランナー」であった。
タイレル社が開発した最新レプリカント「ネクサス6型」の一団が人間を殺害し脱走、シャトルを奪い、密かに地球に帰還した。タイレル社に押し入って身分を書き換え、ブレードランナーを殺害して潜伏したレプリカント男女4名(バッティ、リオン、ゾーラ、プリス)を見つけ出すため、ロサンゼルス市警のブレードランナーを退職していたリック・デッカードが呼び戻される。デッカードは情報を得るためレプリカントの開発者であるタイレル博士と面会し、彼の秘書であるレイチェルもまたレプリカントであることを見抜く。人間としての自己認識が揺さぶられ、戸惑うレイチェルにデッカードは惹かれていく。…

出典:wikipedia

本作でも引き続き重要な役割を担う、"ブレードランナー""レプリカント””デッカード””レイチェル”などのキーワードについて知るためにも、前作を事前に見ておく必要があります。

そもそも30年以上も前に公開された『ブレードランナー』の続編がここまで注目される理由は、この作品のSF界に与えた影響の大きさによるのでしょう。

movie.smt.docomo.ne.jp

未来の、ハイテクでありながら退廃的な世界観

ブレードランナー』以前が未来への希望にあふれた世界を示していたとすると、以後はテクノロジーや未来の負の側面も描くようになっています。

影響を受けたと考えられる作品は数多ありますが、例えば攻殻機動隊の街並みやマトリックスの荒廃した世界など、後続SF作品の世界観に影響を見ることができると思います。

この『ブレードランナー』にも原作があります。

フリップ・K・ディック(彼自身もSF小説界の先駆者で大御所です)の『アンドロイドは

 電気羊の夢を見るか?』が映像化にあたっての下敷きとなっています。

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))

 

 必ずしも、ストーリーは一致しませんが、世界大戦により荒廃した世界や人間と一見見分けのつかないアンドロイド、そしてアンドロイドと判別する方法とブレードランナーなど、キーワードは映画でも踏襲されています。

続きを読む